caguirofie

哲学いろいろ

2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

秋のうた(Verlaine)

秋の ヴィオロンの すすり泣き長く 私の 心はその ものうさに疼く 時の 鳴るとき息 苦しく蒼白く 私の 旧き日々の 想い出され泣く 不倫の 風の誘うまま 私は彷徨う 落ち葉の ごとくただ あちこちと迷う Paul Verlaine: Chanson d'automne 《 Poèmes saturnie…

《われ》は他者である( Rimbaud )

《われ》は他者である ・・・ ロマン派の思想が正しく理解されることは全くなかった。これまでの評価は 誰が下したというのか。《批評家》か。《ロマン派の連中》だって? 歌というものはごく稀れにしか一つの完成作品ではないということを すなわち歌い手に…

幻想曲(ド・ネルヴァル)

それは私にとって至上の歌曲(アリア) そのためなら ロッシーニも モーツァルトも ウェーバーの すべてをも惜しむまい 弔いを 送るように 気だるく 流れる いにしえの 詠唱(アリア) ひとり私に 秘密の魔力を 発揮する これを聞くときいつも私は 魂の若や…

この世の薔薇(イエイツ)

美は一抹の夢にすぎぬと 夢の中でにせよ 誰が見て言うのか 悲しみの――そう 新しき 奇蹟はもはや起こるまいと 悼むその――誇りをもって かれら赤い唇にとっては トロイは重たい弔いの一閃のうちに 過ぎ去ってゆく ウマナの子らは亡くなった われわれと労働する…

真昼(ド・リル)

平原にはびこる夏の王 真昼 音もなく天(そら)から落ちる 銀の布 静寂 燃え盛る大気 そよともなく 大地は火の衣を纏って うとうとする 果てしなく 野には一点の陰もなく 羊の群れに 涸れた水源(みなもと) かなたに森は 縁(ふち)は薄暗く じっと眠る 重…

ミラボー橋(アポリネール)

ミラボー橋の下をセーヌの河が流れ 僕らの愛は 僕に想い起こさせるのか 喜びはいつも苦しみの後に来たものと 夜は更け時が鳴り 日々は過ぎゆき僕は留まる 手を結び互いにふたり向かいあえば 僕らの腕の 橋をくぐって流れ去るは 永遠(とわ)の眺めの緩やかな…

ナルシスは語る(Valery)

・・・・・・・ナルキッサの霊を鎮めるために ああ兄弟 悲しい百合よ 私は美を患い おまえたちの裸身の中に私自身を願い ナンフ ナンフ 泉のナンフと おまえたちに 私は至純の沈黙において私の空しい涙を捧げに来たのだ 深い静寂は私を聞き届け 私はそこに希…

私はおまえとともに・・・( A.Artaud )

私は おまえとともに 死者の地にある 現実の極地 悲痛のきわまった地 私にとってここは もはや異国では ない おそらくそれが いまのわたしの唯一の勝利 だ Je suis avec toi sur la terre des morts Sur la terre la plus réelle sur la terre la plus amère…

聖女( Mallarme )

この窓を 覗くと映る 古い白檀 に金箔が 浮かび上がる 笛(フリュート)や マンドリンが取り囲む 中でこの金ぴかの 絃琴(ヴィオル) を弾く青ざめた聖女 は古い本を ひろげて坐り 晩鐘の音とともに聖母 唱歌が きらきらと流れる 沈黙の楽人 が白檀もなく 本…

扇( Mallarmé )

扇 わが妻の 空に向かってひと煽ぎすりゃ 言葉なんてつかまるものさ などと未来の詩は 古巣の気取りから離れてゆく 翼を低く垂れて翔ける伝言使 この扇が 仮りにこの扇がそんな使い であったなら 仮りに おまえの後ろの鏡に 透きとおって映るこの扇が そんな…

海の光景( Rimbaud )

銀や銅の 戦車は 鉄や銀の 船首は 水しぶきを 上げて 茨の株を 根こそぎにする 荒野の潮 の流れが 引いてゆく 海の巨大な 轍(わだち)が 輪を描いて 東へと向かい 森の支柱へと 突堤の 樹幹へと 進む その縁辺に光の渦は 交差している A.Rimbaud: Marine, …