扇( Mallarmé )
扇
わが妻の
空に向かってひと煽ぎすりゃ
言葉なんてつかまるものさ
などと未来の詩は
古巣の気取りから離れてゆく
翼を低く垂れて翔ける伝言使
この扇が
仮りにこの扇がそんな使い
であったなら
仮りに
おまえの後ろの鏡に
透きとおって映るこの扇が
そんな使いであったなら
(その時には
翼も射落とされ
燈明の羽根の一片一片が香の煙の
なかを水をたたえた
古い鏡の中へ
ふたたび
沈んでゆくだろう 私には
悲しいことだけれど・・・
けれど)
忙しく動くおまえの手の中
で いつも
そんな扇であったなら