caguirofie

哲学いろいろ

真昼(ド・リル)

平原にはびこる夏の王 
真昼
音もなく天(そら)から落ちる
銀の布


静寂


燃え盛る大気 そよともなく
大地は火の衣を纏って
うとうとする


果てしなく
野には一点の陰もなく
羊の群れに 涸れた水源(みなもと)


かなたに森は
縁(ふち)は薄暗く
じっと眠る
重たい休息


ひとり実のりの小麦のこがねいろの
海が
眠りを軽んじ はるかに広がり


聖なる土地の平和の子らは
怖れを知らず 
陽の盃を干す


時折りその焼ける魂の
溜息のように
ささやく重い麦穂の中から
荘厳(おごそか)な
緩やかな波動が
目覚め
埃だらけの地平線に
逝く


白い牡牛は傍の草に
寝ころび
大きな喉によだれを垂らし
けだるく見事な眼差しで
ついに達しない内なる
夢を
追う


人よ
もし心に喜び・苦しみを
抱くとき
光り輝く野原に
真昼にさしかかったなら
逃げるのだ


自然は虚(うつ)ろで
太陽は焼き尽くし
ここに活きるものなく
悲しみ喜びもない
のだから


もし涙や笑いの迷いが
解け
この世の狂騒の忘却を
願うなら
もはや赦しも呪いも
忘れ
至高のどんよりとした官能
を願うなら


来てみたまえ


太陽は崇高の言葉を
きみに語りかける


灼熱の炎を心ゆくまで
浴びたまえ


そしておもむろに
賤しき町へ
帰るのだ


聖なる空(くう)に七度び
浸した
心をもって


Leconte de Lisle: Midi, 《 Poèmes antiques 》