caguirofie

哲学いろいろ

この世の薔薇(イエイツ)

美は一抹の夢にすぎぬと
夢の中でにせよ
誰が見て言うのか


悲しみの――そう 新しき
奇蹟はもはや起こるまいと
悼むその――誇りをもって


かれら赤い唇にとっては
トロイは重たい弔いの一閃のうちに
過ぎ去ってゆく
ウマナの子らは亡くなった


われわれと労働する世界は
過ぎ去る
荒涼とした早瀬の
中の蒼白い水のように
天の泡沫


廻りゆく星々のもと
揺れ動き
所を譲る魂の真っ只中で
生き続けるは 
この寂しき顔


天使らよ 
薄暗き住み処の中でこうべを
垂れよ


おまえたちの生まれる前に
やがておまえたちを打ち負かす
どんな勇者も生まれる前に


くたびれて 
もの柔らかな ひとりが
かの人のそばに留まっていた


かの人はさまよえるこのひとりの女の
もとに
草生い茂る
道なる世界を創ったのだ


William B. Yeats: The Rose of the World