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哲学いろいろ

ことばの仕組み――日本語に沿って 文法とは こうである――

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§1  あらまし

1 文表現を大前提とする。文とは 話し手の思想ないし判断内容について 最小限にまとまったかたちで表現されたことばである。

(a) 私は口下手だ。

2 文には その構成要因として成分(主題成分だとか)と要素(語)そして素材(音素)がある。

3 これらの構成要因を話し手は 文としてどのように生成させるか その仕組みが 文法である。

 



§2  文の構成要因として 成分は 基本成分と附属成分とから成る。

4 基本成分は 主題成分(T)と論述成分(P)とから成る。 

(b) 主題成分(T1)‐ 主題成分(T2)‐ 論述成分(P)
(a-1) 私ハ      ○       口下手デアル。
(a‐2) 私ハ      話ガ(口ガ) 下手デアル。
      
5 かんたんに言って 問い(主題)と答え(論述)とである。 

・ 私ハ = ワタシという主題(T1)の提示。
     = 私ニツイテ問ウナラバ

・ 話ガ = ワタシにかかわってハナシ(またはクチ)と
      いう関係主題(T2)の提示
     = 話ノコトダガ ソノ話ガ

・ 下手デアル = 〔答え(P)として言えば〕拙イ。

6 一般に主題にあてられる語を体言といい 論述を形成する語を用言という。

ワタシ・ハナシ・クチそしてヘタは 大きく言って 体言であり 下手ダ・アルは 用言である。

7 文において 文意としての判断内容は 論述用言に収斂していく。また同じく判断は具体的に 用言をそれとして活用させることによって 表示する。下手ダ と 下手デナイといった選択肢がある。

8 話し手(判断の主体)は とくにその論述用言への収斂と用言の活用(法活用)とをもって 文を統括する。法とは 判断を締めくくるときの気分 mood ないし判断の形式を言う。

・   話し手→ 主題の提示→      論述の提示
                        その判断形態(法活用)

(a-3)(我ハ言ウ) 私ハ=〔主題格〕   口下手ダ。=〔論述格〕
          かつ=〔経験主格(私ガ)〕 かつ=〔述格・存続法〕

(a-4)(我カク考ウ) 私ハ=〔第一中心主題格〕
         〔−(《私にかかわるところの》)〕 
          話ガ=〔関係第二主題格〕  下手デアル。=〔論述格〕
          かつ=〔現象主格〕   かつ=〔述格・存続法〕
                        

9 ちなみにここで 主格と述格との連絡関係は 英文でいう主語と述語(S+V または S+V+C〔 I am a halting speaker.〕 )の文型である。

10 主格は ここで 経験主体を現わす経験主格(私ガ)と 現象そのものを主格に見立てる現象主格(話ガ)とが出てきている。

11 しかるに 主題格の提示というのは この英語文型に見られる主+述の格活用による統括関係とは別の発話層を形成している。

11-1 言いかえると 統括関係が 文の全体として二重の層において発揮されている。主題の提示と論述での対応といった問答の対応関係を示す主題格→論述格の格関係の層 および 論理的な意味内容を連絡させている主格←→述格の格関係の層。英文は 後者による単一層である。

12 文の成立にとって 主題と論述との二つの基本成分が 必要かつ十分な条件である。

(c)  主題 論述
(d) 口   下手。

または  

(e) 主題=T1・・・T2・・・T3・・・T4=論述P
(f)     我      昔    口    下手。

このように ある種の答え(論述P)に行き当たるまで 主題(T1〜n)を列ねることで 文が生成し 成立していくと考えられる。論述(P)も 初めは 論述主題(Tn)である。

13 基本成分以外の要因を附属成分という。附属成分は 一般に条件詞とよべる。

14 たとえば基本成分の中の主題体言や論述用言を条件づけ限定するのが 附属成分である。条件づけることを 修飾するという。

15 主題体言を条件づけるものを 主題条件〔または主題条件詞〕(属格語句・連体語句) そして論述用言を修飾するものを 論述条件〔論述条件詞〕(連用語句・副詞)とそれぞれ名づける。

(g) 
中心主題(ハ格)    関係主題(ガ格)  論述主題(用言の法判断)
(h) 
口下手ノ‐私‐ハ     手紙ヲ書ク‐ノ‐ガ  トテモ‐好キダ。
主題条件 ‐体言‐活用格  主題条件‐体言‐活用格  論述条件‐論述用言

16 成ルホドという場合 成ルが ホドという体言を修飾して 主題条件となる。

17 一つの文そのものを条件づけ別の文に連絡する附属成分は 文条件詞(接続詞)である。いわゆる逆接の接続詞のガは 次のように関係主題として引き出された事柄(T2)に対する応答を導いている。

(i) 中心主題(T1) 関係主題(T2) 論述主題(P)
(j) 私ハ     物書キダガ    演説モ上手イヨ。
(j-1)私ハ‐ 私ガ‐  物書キ ‐ダ‐ガ    演説‐モ‐上手イヨ。
(k) T1‐ T2 T3‐P‐文条件詞    T4‐主題条件詞‐P
(l) 文1・・・・・・・・・‐文条件詞    文2

☆ 文1の中心主題(T1)は 文(2)の主題(T4)にとっても中心主題でありつづける。
(m) T1‐○ ○‐○‐○ T4‐ガ‐P.
(j-2) 私‐ハ ・・・・・ 演説‐ガ‐上手イヨ。



18 ナルホドという語句は 用言の成ルが主題条件に変化し(連体形に活用し) ホドという体言と複合して 一つの語を形成するに到っている。これは 間投詞であり 超文条件詞(文外条件詞)と名づける一つの附属成分である。

19 超文条件詞も 文条件詞(接続詞)と同じように一文全体を条件づけるが 文と文とをつなぐわけではない。あたかも文の外にあって 自らがあたかも一つの文の如くでありつつ 別の一文を条件づけている。

20 
(n) ナルホド ソウダ。
(o) オソラク ソウダ。
という文例で ナルホドやオソラクはそれぞれ 《〔それ‐ハ それ‐ガ〕ソウダ。》という一文に対して あたかもその文を超えて かかわっていく。

20-1 ナルホドやオソラク自体だけで それぞれ論述を構成しうるかの状態であり それぞれがすでに一つの文に近い。
従ってこれら二つの文例は それぞれ二つの文から成り立っているかのごとくであり 互いの(たとえばナルホドとソウダの)間にはあたかも断層が出来ている。その断層を含んだ全体を 話し手が統括している。

21 文表現の内容は すべて話し手の主観であるが 超文条件詞は特に 話し手個人の感覚に近い主観を表出している。アッ ソウダ。のアッなる間投詞が 分かりやすい。

22 用語のまとめ。

(あ) 文の表現 
・ 話し手(主観・判断)の存在。話し手が文を表現し統括する。
・ 主題と論述から成り 主題は 論述・用言へ意味の連絡として収斂してゆく。
・ 用言の法活用によって主観の判断内容を示す。
・ 統括作用は 二層にておこなわれる。

一つ目の主題提示層は あたかも主題の羅列のように成分がいくつか発話されていく層である。
そこでは 種々の主題の性格内容が 互いとの関係において 決められていく。
ハ格(中心主題格)に〔それの関係主題を提示する〕ガ格がつらなり ほかにヲ格やニ格(一般に賓格)などなどが現われる。

もう一つの論述収斂層は それら主題成分が――論述の述格の決定とともに―― その述格に対する経験主格であるとか 動作主格・現象主格ないし定義主格であるとかのような 主+述(いわゆるS+V)の論理的な格関係のもとに置かれていく層である。

ガ格が一般に主格を――主題提示層における関係主題格とともに――兼ねる。ハ格も――中心主題格であるほかに――主格となりうる。 

(い) 基本成分
・ 主題 T(体言=名詞やあるいは動詞の体言用法〔連用形・連体形活用〕など)
・ 体言も活用し それを格活用とよぶ。
・ 論述 P(用言=動詞・助動詞・形容詞など)
・ 用言の活用を 法活用という。
・ さらには 予めながら用言を次の如く分類したい。

 動態用言=動詞
 状態用言=形容詞・形容動詞
 補充用言=助動詞       


(う) 附属成分=条件詞
・ 主題条件〔詞〕(体言に連絡する語句=体言の属格活用形態や用言の連体形〔連体法活用〕など)
・ 論述条件〔詞〕(用言を修飾し用言に連絡する語句)
 体言の対格〔ヲ格〕活用形態
 与格〔ニ格〕活用形態や
 用言〔ヨイ〕の連用形からの転用形態〔ヨク〕
 また副詞〔トテモ〕など
・ 文条件詞(接続詞)〔たとえばガ=逆接として文を条件づける。←関係第二主題という格活用から転用。〕
・ 超文条件詞(=文外条件詞;間投詞〔オソラク・ナルホド・アッなど〕)