caguirofie

哲学いろいろ

いのり

   私の頬を打つ一筋の偽りの涙よ
   私は今起とうとしている
   だから 打たないでくれ
   そっと微笑みの中に流れてくれ
   だから


   私の頬を打つ偽りの呪いよ
   こめかみを伝って私を促す呪いの鼓動よ
   私は今発とうとしている
   だから呪わないでくれ
   だからそっと気取らず おごらず
   私の胸を流れてくれ
   悲しみの極み 喜びの初め
   偽りの出発ち 偽りの呪い


   だから そっと そっと光をしまっておいてくれ


   偽りの馬車が迎えに来た
   四頭立ての馬車は今 回転を止めて
   輪のあたりにころげ落ちそうになる私を
   拾おうとしている


   馬車が偽りか ころげ落ちるのが偽りか
   私は今 起とうとしている
   何としても 起とうとしている
   だから 馬車も要らない
   だから 馬車は消えてくれ

   _________


   僕のよろいの皮膚に
   矢が飛んでくると思うのは間違いだ
   僕の鉄兜に
   矢が突き刺さると思うのは間違いだ
   と僕は 鏡の中の僕に問いかける


   問いかけるのは僕だ
   鏡の中には しかし 僕しかいない
   僕の中の鏡には 矢が幾本か飛んでくるのが見える
   しかし この矢は 映ったかと思う僕の
   本当の自分だ

   _________


   僕の袖が露に濡れているとしたら
   それは 水仙の涙が 僕の皮膚に
   突き刺さったからだ


   僕の顎に何か光るものが見えたなら
   それは Hidalgoのおぼろげな輝きに
   僕の幻影が 映ったとしか思えない


   それは泥の中の青春
   泥の中の老年
   泥の中の泥
   若年の中の泥
   泡の中の若年
   幻影の中の泡


   泡の中の幻影
   彗星の輝きがつぶやきかけた偽りの微笑み


kavkas