いのり
私の頬を打つ一筋の偽りの涙よ
私は今起とうとしている
だから 打たないでくれ
そっと微笑みの中に流れてくれ
だから
私の頬を打つ偽りの呪いよ
こめかみを伝って私を促す呪いの鼓動よ
私は今発とうとしている
だから呪わないでくれ
だからそっと気取らず おごらず
私の胸を流れてくれ
悲しみの極み 喜びの初め
偽りの出発ち 偽りの呪い
だから そっと そっと光をしまっておいてくれ
偽りの馬車が迎えに来た
四頭立ての馬車は今 回転を止めて
輪のあたりにころげ落ちそうになる私を
拾おうとしている
馬車が偽りか ころげ落ちるのが偽りか
私は今 起とうとしている
何としても 起とうとしている
だから 馬車も要らない
だから 馬車は消えてくれ
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僕のよろいの皮膚に
矢が飛んでくると思うのは間違いだ
僕の鉄兜に
矢が突き刺さると思うのは間違いだ
と僕は 鏡の中の僕に問いかける
問いかけるのは僕だ
鏡の中には しかし 僕しかいない
僕の中の鏡には 矢が幾本か飛んでくるのが見える
しかし この矢は 映ったかと思う僕の
本当の自分だ
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僕の袖が露に濡れているとしたら
それは 水仙の涙が 僕の皮膚に
突き刺さったからだ
僕の顎に何か光るものが見えたなら
それは Hidalgoのおぼろげな輝きに
僕の幻影が 映ったとしか思えない
それは泥の中の青春
泥の中の老年
泥の中の泥
若年の中の泥
泡の中の若年
幻影の中の泡
泡の中の幻影
彗星の輝きがつぶやきかけた偽りの微笑み