caguirofie

哲学いろいろ

#6

もくじ:2010-09-17 - caguirofie100917
2010-10-01 - caguirofie101001よりのつづき)

 たとえば この組み合わせとなった両義性(つまりそれは ここでは 象徴主義か否か 倫理の究極化か否かなどといった二つの組みである)の分岐点から抜け出た大岡じしんをみごとに表わした作品としては 《彼女の薫る肉体》を挙げれば 必要にして十分と思われる。
 この作品では 詩神とも言うべき究極的な存在たる《彼女》にみづから錯乱したかのごとく 肉迫してゆき しかもその《彼女》の肉声と 混然一体となることなく 《彼女》と《私》とを いわば地球の上に立って 或る種 客観的に位置づけることに成功しているという作品である。《彼女の肉声と 混然一体となることなく》というのは 自己の中に見え隠れするそのような一つの客観的な存在(あるいは 非在)の側から 倫理的な裁判をくだすという誘惑に ついに 打ち勝つという意味である。
 (人は この作品を読むなら 何か鬼気迫るといった感を抱くことを禁じえない)。

 
  (つづく→caguirofie101003)