caguirofie

哲学いろいろ

#22

もくじ→2008-04-22 - caguirofie080422

第三章 《生産》としての労働(=狭義の生産)行為における実存

6a 現代日本における《法》の世界――狭義の生産行為――における実存(その三)

ここは 日本の情況を 特に現代へと焦点をあわせて さらに論じていく場所であるが ここで いま少し まづこれまでの主な概念とそして流れを 整理しておくならば。――
西欧の系譜――つまり今は ある程度 日本の情況に中にもその影をおとしていると見るそのような内容――としては カイン〔とアベル〕の〔神による〕揚棄 揚棄された社会内的カイン〔とノア〕の再揚棄。日本の本来の情況と思われるものとしては アマテラスによるスサノヲの揚棄〔=それは ある意味で 無関心という関心によっているが〕 末法期のそのアマテラスの揚棄〔そこでは スサノヲが 先の揚棄以上に 復活する〕。
このとき考えられることは 一方では カインという(また カインへの)政治行為を 揚棄する一連の・しかも非連続の 様式であり 他方は ある意味で 個体の内的な側面にすでにおいて アマテラスによる スサノヲという《法》の世界の連続的な揚棄 従ってそれは 様態であるということ。

  • なお 《様式》ないし《形式》も またあるいは《様態》も ともに同じく言語行為によっているのであるが 両者を区別するならば 前者は 言葉によって明示的であり 後者は 必ずしも明示的でなくてもよい・従って 情感的である。なお《形式》は 言語行為として 明確であるが 必ずしも 言葉によって明示的である必要はない。従って 《様式》においても あるいは《様態》においても 《形式》は ともにそこに作用しうる。
  • また 《形式(フォルム)》は 《形相(イデア)》のより具体的に明確になったものであり 《形相》は 《形式》の拠ってきたる起源的領域である。
  • さらにまた 《類型》(あるいはここにも 《様式 / 形態》は もっぱら具象的な《法》の世界についての・もしくは それを基礎にしたさらに広い《世界》についてのフォルムである。すなわちこの《類型》としてのフォルムは 一般に 質料関係に根ざした概念である。

言いかえれば 一方で カインを揚棄する神 つまり《不法》行為の 非連続的に連続する(つまりは 弁証法的な)書き替えを その形式とし 他方で スサノヲを揚棄するアマテラスという《不法》行為の絶えざる普遍一般化を その様態とする。ということは スサノヲの絶えざる一連の復活。そこでは 歴史的な新たな書き込みは 基本的に 不要になっている。
このさらに煮つめた議論としては アマテラスのもとでは そのスサノヲとの対立関係は むしろ つねに存在し しかも つねにすでに揚棄されている。極論として言えば 一般にスサノヲの反乱という歴史の中の揺れは もとの様態に戻るのみである。他方 神もしくは《不法》の書き替えを 形式として持つところでは 歴史は 簡単に言って 進展するだろう。革命的であるだろう。歴史の揺れは 書き替えによって 回転(= révolution )するであろう。そこでは スサノヲは新たなるスサノヲへと回転し カインを揚棄する神は 次々と歴史的な変貌をとげる。
さて このような概念的な一つの対比・対立は もし イエスにろう《 Genesis 》の書き替えが 普遍歴史的であるとするなら このように対立する両系譜の世界も たとえばマルクスが《法》の世界を 類型として 普遍的に捉えることによって 《世界史的》な生産行為の視点に立ったとされるように それぞれの系譜を統合するような普遍実存的な視点に立つことが出来ると考えられるであろうか。
この問いに対して ここでその答えは用意されていない。ただ 論理的に言っても 実際の存在の基点から言っても 普遍実存的であるためには まづ特殊実存的でなければならないであろう。いや もっと実際の問題から言って 日本に生きる者にとっては イエスによる旧約の書き替えも マルクスによるそのイエスの書き替えに立つ・しかもそのキリスト教的な《法》の世界の書き替えも 実存として自らのものでないと ほんとうは告白しなければならない。――その意味では 特殊日本的であることによって 普遍性を目指す以外にない。いや むしろ それもかなわず 日本という種としての普遍性(??)を明示的にも確立しこれを保つこと これ以外にないであろうか。それが 類としての普遍性と どのような関係にあるのか もちろんこのことにさらに関心は向かわなければならない。
いづれにしても 以上のような趣旨において ここで日本の情況に ことをしぼって つまり アマテラス‐スサノヲ体系また構造における実存としての狭義の生産行為を いまは そのものとして 論じる番である。
(つづく→2008-05-14 - caguirofie080514)