caguirofie

哲学いろいろ

#22

もくじ→2008-07-30 - caguirofie

第一章 《アマテラス‐スサノヲ》体系――その神話的・黙示的世界をとおして――

第三節 《ブラフマン》唯一非顕現神構造

第三節・その二 シワ゛の歴史的展開としての《スサノヲ(シワ゛)の世紀》
§20b

さて この出生讃歌は ふたたびインドラ自身の言葉によって 次のように締めくくられる。

 インドラ出生讃歌
十二(インドラの言葉) 困厄のゆえに われは犬の臓腑(はらわた)を料理せり。神々の中にわれは憐愍者を見いださざりき。われは〔わが〕妻の尊敬せられざるを見たり。そのとき鷲はわれに密(ソーマ)をもたらせり。

すなわち ここに到って その全体の要約に述べられていたように かれ《幸運時代の幕は開かれる》というようである。なおちなみに 《鷲がインドラにソーマをもたらした》経緯を 同じくリグ・ヱ゛ーダの別の歌から引いておこう。

    ソーマの地上への将来 その一 インドラと鷲の讃歌
四(インドラの言葉) この鳥をして 〔他の〕鳥たちに優先せしめよ マルト神群よ。快速に飛ぶ〔この鷲〕をして 〔他の〕鷲たちに優先せしめよ。羽美しき〔鷲〕が 車輪なき(他力を借りずに)自律の力により 神々の嘉(よみ)する供物(ソーマ)を マヌ(人間の祖先)にもたらさんとき。
七 ・・・鷲はソーマをもたらせり。一挙に千また万のソーマ圧搾(無数の祭式に十分なソーマの意)を。そこにプランディ(《豊饒》)はアラーティ(《吝嗇・敵》)を置きされり。

などである。第七句については 《プランディ》は 《インドラの寛裕心》を指すと言われ その対立概念である《アラーティ》と並んで それらは 《インドラの出生讃歌》の第二句後半の言葉(すなわち 《われは ある者とは戦わんと欲す ある者とは和解せんと欲す》)を裏付けるかたちを取っている。
いづれにしても 以上に見た《インドラの出生》にまつわる歌は 社会体系の旧い第一次形態の要素を持ちながら 全体として アジア的なインドラの基本的形態を――従って 生産行為かつ日常生活におけるアジア的形式のたとえば個人主義を――黙示し その概念が広く解されるかぎりにおいて やはり《ヰ゛シュヌ‐シワ゛》体系の展開を示唆しうるものと考える。何故なら アジア的経済主体が 西欧の系譜におけるとは異なって――たとえば プロテスタントたちの《召命》〔としての生産行為〕の思想 あるいは その批判的命題としてのマルクスの《共同なる〈生産‐所有〉行為》なる思想にそれぞれおけるとは 微妙に異なって―― 初めに このインドラを愛さなかったという点において 少なくとも共同体関係としての《アマテラス‐スサノヲ》分離連関を 排除しないと思われるからである。われわれの主眼は 次の点にある。
アジア的社会体系は それが西欧的資本制生産形態を受け容れたとするなら おそらくは それの反措定としてのマルクス思想を 上の受容の様式において 受け容れるであろうということ しかしながら このような一連の西欧の系譜のもう一つ背後に(あるいは その深層に) それらを社会形態単位的に蔽うであろうようなやはり《アマテラス‐スサノヲ》連関体制を持ち続けるであろう という考えである。


以上 われわれは第一節から続けて第三節のここまでの部分において 《リグ・ヱ゛ーダ讃歌》による限りで アジア的社会体系を それ自体の中において および それと西欧的社会体系との対比の上で その基本的な形態を捉えた。それは 初めに 《政治主体‐政治学主体》の分化構造という大雑把な視点に立つものでありながら そこにおいて努めたことは しかし現代において《スサノヲ‐アマテラス》統一構造的な政治(かつ政治学)主体をも内に容れた 総合的な《 Susanowo - Amaterasu 》体系を把握しようとすることであった。まづは これをもって その一つの――傍系的な――基礎理論としたい。最後に この総合的な社会体系の概念によって 西欧的社会体系( Fig.E-1)を さらに詳細にして 捉えておきたい。それは もとより 両社会体系の単なる並立という視点からではなく ひとつの基本的な社会体系の内部に さらに互いに錯綜すて併存するという初めの視点に立つことによるものである。また それは むしろ アジア的社会体系のその第二次ないし第三次形態を 内在的に類型的によく明示するものと思われるからである。
なお この節の第三部としては 上の基礎理論を 一般的な議論として 傍証すると思われる二・三の点をさらにつけ加えたいと考える。

社会形成態 創造主 Creator  被造物creature
アジアとの対比 Brahman(= Visnu = Siva )》 《アマテラス=スサノヲ》

(つづく→2008-09-13 - caguirofie