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哲学いろいろ

ステファヌ・マラルメ      Stéphane Mallarmé

蒼天 l'Azur (1866)

久遠の蒼天をもって晴朗なイロニーが
花のような無痛の美を秘め 
不毛の《苦悩》砂漠を越え
その天分を呪う無能の詩人に迫り来る。


逃げ回り目を閉じると私は それが見える。
私の空っぽの魂を覗き 驚くばかりに強い
悔恨を引き出すのを。《さらに逃げたものか? どんな獰猛な
目潰しの闇をこの胸を抉る侮蔑に投げつけたものか?


霧よ立ちはだかれ! おまえの物憂い悔悟の灰を
靄の長い襤褸切れをつけて隈なく撒き散らし
鈍い鉛色のこの泥沼を蔽え。
大きな無口の幕を張れ。


我が〈倦怠〉よ おまえは死(レテ)の池から抜け出し
泥土と蒼白い葦を掻き集め
疲れを知らぬその手で憎い鳥どもが開けた
大きな青い穴を塞いでしまえ。


物寂しい煙突は絶え間なく煙を
吐いてくれ。煙幕の独房は煤を吐き続け
戦いの尾を連ねて 地平線に
黄色く死んでゆく〈太陽〉を消してしまってくれ!》


――《天》が死んだ。――《おお物質よ!私はおまえの許に
駆けつける。おぞましき〈理想〉と〈罪〉の忘却を与えよ。
人々の楽しき獣の横たわるその敷き藁を
共にしようと来たったこの殉教者に。


何故と言えば 遂に私の脳漿は壁の下に転がった
お白粉壷のように空っぽにされもはやそのすすり泣く
思想を飾る術も持たないからには 私は悲しくも
欠伸とともにおぼろげな最期をそこで迎えたいからだ・・・。》


それも空しく《蒼天》が勝ち誇る。私の耳には
鐘の音が歌い わが魂〔こそ〕は 憎い勝利顔で囁き
我々に恐怖を植え付ける。
鐘は時を告げ 青空に舞い上がる。


靄の中を 昔馴染みが剣のように 
あなたの生まれ付きの苦悶を貫き荒らし回る。
《邪(よこしま)で無益の叛乱を企てどこを逃げたものか。》
私は憑かれている。《この〈蒼天〉という〈蒼天〉!》