caguirofie

哲学いろいろ

La Jeune Parque 1


  星を散りばめたこんな時間に 孤りして
  そこで
  もし風の音でないとすれば 泣いて
  いるのは 誰かしら
  今にも泣こうとしているわたしのこんなにそばで
  いったい 誰が 泣いているの?
  
  何か心の深い意図に対して憑かれたかのように 
  わたしは わたしのこの手は そっと
  目鼻をかすめて わたしの中から 多分 それは
  わたしの弱さの中から 一滴のしずくがこぼれるのに 触れたように
  思っている。


  〔わたしは〕わたしの運命を おもむろに超えて 
  《もっとも純粋なるもの》が 静寂のかなたから 
  この傷ついた心を照らし出してくれることを待っている。


  〔大波は〕大波のうねりは わたしの耳に〔は〕咎めのうねりを
  囁いている。――
  岩礁の喉の方へと
  欺かれた藻くずを 
  ものを苦々しくも呑むことになったような 
  心を締めつける嘆きをざわめかせ 
  送りやっている。


  そして
  髪を逆立て 凍ったような手をかざして おまえは 何をしているの?


  あらわな胸の谷間を抜ける こんなにも執拗な 風に吹かれた落ち葉が
  ざわめきつづけるのは
  何故なの?


  この
  未知の
  天空に
  つながれて
  わたしは 
  きらめいて
  いる。


  災厄を求めているわたしの渇きに 限りない天体は
  輝いている。
  ・・・・・・
  わたしは ここまで
  わたしを噛むあの蛇を追ってきてしまったのかしら。
  ・・・・・・

       ポール・ヴァレリ《若いパルク》日比野暉彦訳
       Paul VALERY : La Jeune Parque 1917

cf.http://www3.kitanet.ne.jp/~isi234/wakaiparuku.html (ほかの方の和訳例)
http://us.geocities.com/larbaudjr/valery.htm(原文)
* パルクは ギリシャ神話で運命の女神(モイライ=ラテン名がパルカエ)のうちの一人
   Parcae - Wikipedia