池原悟:自然言語処理研究の考え方
▼ 池原悟:自然言語処理研究の考え方 ~~~~~~~~~~
2.自然言語と哲学
2.1 精神的産物としての言語
(2)言語と哲学
言語が人間の精神的産物であっても、人間の精神は外界の反映として成立すること
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☆ これは I.カントの認識論に注意を払っていないと思われる。
ただしわたしは カント説――コペルニクス的転回の成った人間主体の〔純粋悟性における〕対象世界に対する優位説――に与しません。
主体の感性の発動と対象から発せられる刺激(触発)とが 同時一体であるという仮説に立ちます。
▼ 2.2 科学的認識と言語 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
言語過程説がある。言語は「対象」、「認識」、「表現」の過程的複合体である
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☆ この過程については 三つの基軸だけではなく さらに細かく分析したほうがよいでしょう。
○ 対象------われ(話し手)
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感性による知覚
↓
悟性による概念認識
↓
理性による綜合的統括
↓
意志による判断(理性の用意した選択肢について良し悪しの選定)
↓
〔おもに言葉をとおしての〕自己表現
☆ 感覚を重視するのは 例のクオリアの問題があります。
つまりそれは 実際には 言葉による表現に現われないのですが にもかかわらず 文意をしっかりと把握するには 言語外の要素も 重要になるはずです。それが 人間の言語過程です。
▼ ( ibid. ) 言語では対象は話者の認識を通して表現に関係づけられること
☆ 《対象は 認識を通して表現に関係づけられる》⇒
《〈対象の知覚とその概念認識とそれらの統括 そしてさらに自己の意志の決定および表明〉として 自己表現が成されて行く》
▼ また表現への関係づけに対して自然発生的で社会的な規範である言語規範(広義の文法)が媒介すること
☆ (あ) 《言語規範》⇒
《〔言語表現をめぐる〕規則》または そのまま《文法(文表現の仕方にかんする社会的な取り決め)》
(い) 全体⇒ 《人びとが共同生活たる社会にあって 言葉を持ちそれぞれが自己表現をおこなっていくとき 自由にさまざまに表現の方法や形式が見出されるが そのときこの方法や形式を交通整理することが求められる。これが 文法である。ただし し 言語が自然の成り行きとして進化することをむやみに妨げるような取り決めは おこなわない》。
▼ (2)形而上学的認識