オ・ウムラウト
オともウとも聞こえるあいまい母音 ö
これが 昔むかし 日本にいた人びとの言葉にあった。というお話。
その後 文字が借用されるようになって 平仮名では もうその音を写す文字はなかった。そのときには オかウで表わした。まれに エが用いられた。というお話。
- kö 木(こ・く)
- kö-suwe 木(こ)-末=梢
- kö-da-mönö 木(く)-だ(=な=の)-物=果物 cf. 毛だ物=獣
- kö-i (イの折れ)> kï > ki 木(き)
- önö 己(おの・うぬ)
- önö-re 己(おの)-れ: レは ワ-レ(我れ)やナ-レ(汝れ)のレ。つまり親愛称。
- önö-höre 自(うぬ)-惚れ
- mö 身(も・む)
- mö-nuke 身(も)-抜け=蛻
- mö-kuro 身(む)-くろ(殻)=骸・躯
- mö-i (イの折れ) > mï > mi 身(み)
東(あづま)言葉では この ö はエと表わされるような発音だった。
万葉集巻二十・4346番歌
[原文] 知々波々我 可之良加伎奈弖 佐久安<例弖> 伊比之氣等<婆>是 和須礼加祢<豆>流
[訓読] 父母が頭掻き撫で幸くあれて言ひし言葉ぜ忘れかねつる
[仮名] ちちははが かしらかきなで さくあれて いひしけとはぜ わすれかねつる
- 幸(さ)く(佐久)=幸(さき)く
- あれ-て( 安<例弖>)=あれと( tö )
- けとば( kötöba 氣等<婆>)=ことば: 真ん中の ト は テには成っていない。
- ぜ(是 zö )=ぞ( zö )