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哲学いろいろ

継体ヲホドは雄略ワカタケルの子ではないか


 ( a ) 雄略ワカタケルがその妃ワカクサカベとの間にもうけた秘蔵っ子をひそかに越前で育て 時が来るとともにオホキミとして推し出すという作戦だったのではないか。

 ( b ) そのためには ミワのイリ政権の系譜もみづからのカワチ(カフチ)の系譜も あたらしい世代の子供らをみなごろしにしてしまったのではないか。世継ぎは 継体ヲホドのみだという情況を自分たちの手で作り出したのではないか。

 ( c ) この全国制覇大作戦は じつは すでに応神ホムダワケのときに練られていたのではないか。それは したがって おおよそ西暦四百年ころからの百年の計だったのではないか。
 ☆ 史実を比定するための問い求めではなく 神話の物語のなかにさえ日本人と日本社会を全体として捉える契機があるのではないか こういう見積もりのもとに問います。またそれゆえ この哲学カテで問います。
 この見積もりの具体的な事例として いま上に掲げたこの突飛な推測を示して そこから人間類型やら社会の成り立ちをめぐって日本人としての真実が明らかになればと思います。
 

 * 歴史事実の比定を目指すのとは微妙に違って 日本古代史における人間の真実をいろんな角度から写し取ったり描き出したりあぶり出したりしてみたい。こういう魂胆のもとに船出します。

さてオホキミ

(これからあとは分かりやすく天皇と言います。当時はまだそう呼ばれていない)に即位する前から 従兄弟のイチノヘノオシハを暗殺するなど政敵を闇に葬り続けていたのですが したがって日本書紀には

   天下(あめのした) 誹謗(そし)りて言(まを)さく

     大(はなは)だ悪しくまします天皇(すめらみこと)なり

  とまうす。(書紀 雄略二年十月)

 と伝えられているのですが だいたい人はウソをつくときには――ほんとうに人をだまそうとするときには―― 真実の一端もしくは二端・三端を話に混ぜておくものです。あるいはつまり 一歩ないし二歩・三歩くらいは相手に譲歩してものを言うというのが通り相場です。この《大悪天皇》のくだりを正史に載せているということが くさい。さらにウラがあるのではないか。こうなります。
 趣旨説明でワカクサカベを妃と書いてしまいましたが その当時天皇という制度はなかったとしても 正式の妻としてかのじょは皇后でした。おわびしてただします。
 それで妃としては その一人にカツラキのカラヒメがいて ワカクサカベには《子無し》と書いてあって 子はただひとりこの妃であるカラヒメに のちに天皇となる清寧シラカ(白髪)がいるのです。しかもこの清寧天皇には《皇后もなく子もない》と書いてあります。
 ほかにも ミワのイリの系譜に触れなければならないでしょうが その家筋の子孫をも含めて 《子無かりき》の記述がそこかしこに連ねられるという事態にあります。いかにも日継ぎの御子が絶えたという情況です。くさい。

 雄略ワカタケルは 応神ホムダワケのときからの天下百年の計(ををしきはかりごと=雄略)を一身に帯びて 皇后ワカクサカベとのあいだの子(のちの継体ヲホド)をひそかに越前にやってそこで育てさせ ほかの後継者になるとおぼしき子らをみな亡きものとした。またそのように実行するよう家来に言い遺して世を去った。
 その結果 継体ヲホドは 果たして 立ち上がった。むろん力を寄せる者たちもいた。二十年ほどごたごたがあって正式な即位が遅れたが ともかく全国制覇大作戦は――統一せるオホキミの位は――成った。その後さらに内紛のごときもめごとがあったようですが 欽明天皇のころにその統一が果たされた。のではないか。
 このあと誰だったかひとりの皇子が《和を以って貴しと為せ さからふこと無きを旨とせよ》ってなことをのたまわった。勝てば官軍ってのは こういうことを言うんですかねぇ。