caguirofie

哲学いろいろ

augustinus:魂

 魂〔の起源〕に関する四つの見解がある。
 (1) 魂は生殖によって生ずる。あるいは
 (2) 誕生した各人に新しい魂がつくられる。あるいは
 (3) すでに他のどこかにあって 誕生した身体の中に神から遣わされる。あるいは
 (4) 進んでその中におりて行く。
 以上四つの見解はどれも無思慮に肯定されてはならない。この問題は カトリック教会の聖書解釈者によっては 問題の晦渋さと複雑さが要求するほどには論ぜられて解明されていない。解明されたとしても そのような書物はわれわれの手許にはまだない。
 われわれはただ 創造者の実体について誤れる見解や ふさわしくない見解を立てることのないだけの信仰をもつべきである。われわれは敬虔の道を通って 創造者の認識へと進む。もし創造者について真実と異なる見解をもったならば われわれの努力はわれわれを幸福へではなく虚妄に導くであろう。
 だが被造物については われわれが真実と異なる見解をもつとしても それを確実な知識や考えと見なさない限り危険はない。というのも われわれは幸福になるためには 被造物ではなく創造者自身に向かうよう命ぜられているからである。
 それゆえ 創造者について ふさわしくない見解や真実でない見解によって説得されるとき 非常に危険な誤謬によって欺かれることになる。実際 実在しないものや 実在しても人を幸福にしないものに向けて進むなら だれも幸福な生に至ることはできないのである。
  (アウグスティヌス:自由意志論 第三巻第二十一章〔59〕泉治典訳)