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哲学いろいろ

augustinus:天の国は

 天の国は地上を寄留(巡礼)している間に あらゆる民族からその市民を召し出し あらゆる言語の寄留(巡礼)者の社会を作る。
 地の国の平和をもたらして保存している習慣や法律や制度の相違には何ら意を用いず それらのうちの何ものをも廃止したり 破壊したりせず むしろそれらは異なる民族においてさまざまではあっても 地上の平和という一つの目的をめざしている限り もしも唯一の最高の真なる神が崇拝さるべきだと教える宗教が阻止されないならば これを保持したり追及したりするのである。
 それゆえに 天の国すら地上において寄留している間は地上の平和を用い 死すべき人間の本性に属する事物に関しては 敬虔と宗教とを妨害せぬ限り 人間の意志の結合を保護しかつ欲求し 地上の平和を天上の平和にもたらす。
天上の平和こそは真の平和であって 厳密にはこれのみが理性的被造物の平和 つまり神を享受し神において相互を享受するもっとも秩序があり もっとも和合した社会であって またそう呼ばれてしかるべきものである。
 その平和に到達したとき 死すべき生はなく 明らかにまた確かに生ける生があるであろう。そして人間が頽廃している間 魂を重くしている動物的な身体はなく 何の欠乏もなくあらゆる部分が意志に従う霊的な身体があるであろう。
 このような天上の平和を 天の国は寄留している間は信仰において持ち そして神と隣人とのためになす――というのは 天の国の生は社会的であるゆえ――良き行為のすべてを 天上の平和を得ることに関連づけるとき その信仰によって正しく生きているのである。
アウグスティヌス神の国について 19:17 松田禎二訳)