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哲学いろいろ

第四章a(§13〜§14)

全体のもくじ→序説・にほんご - caguirofie050805

第四章a 語の生成(§13)

§13 一般論として:→本日
§14 仮説を追求しつつ:
§§14−1〜14−17:→2005-09-07 - caguirofie050907
§§14−18〜14−42:→2005-09-08 - caguirofie050908

§13 語の生成は 文の生成と同時一体の過程であると想定した。
13−1 初めに 形態素CV=無格名辞から出発すると仮定する。

  • 無格体言と言っていいと思われるが 体言という規定以前にあるという意味で 無格名辞とよぶことにする。

13−2 無格名辞が 文表現において 絶対的に(つまり 無規定に=つまり無格活用のまま)提示されてゆく。

① ヤマト ハ。 / アハ!

13−3 文表現においてということが 発話者による広義の判断内容である主観の表現であることを示す。従って その話者の人格が 文において 話者格となって とうぜんの如く その表現を統括する。この統括が及ぶ限りで 個々の無格名辞(いま ヤマト / ハ / アハ)は 絶対提示されたときにも 文表現として 主題になっている。日本文にかんして いま ヤマトが第一主題であり ハ / アハが第二主題である。
13−4 文表現にあって ともかく主題が提示されているという相認識が確認されるなら 同じくともかくその名辞は まず広義に体言と見なされる。または 文の要素となっている言葉つまり語であると 了解される。すなわち 無格名辞(ヤマト / ハ / アハ)が 可能性としてでも体言主題であると見なされるのならば そこに語じたいとしての一定の格も 相認識される。
13−5 この格は 文表現に即して主題格活用(T1ハ T2ガ)となるべきものであるが なお同時にそれとは別に 語じたい(T1 / T2)としては 無格から 一定の語ないし体言として名格に立ったことだと言おう。
すなわち主題格活用(T1−ハ / T2−ガ)をつける以前に 語(ヤマト / ハ / アハ)じたいとして 何らかの形で名格という相認識が与えられるという見方である。要するに もはや無格ではなく 語として独立したと・または独立しうると見なすときの性格内容である。
13−6 すなわち逆に言うならば 文表現にかんして 無格名辞が 一般に体言としての名格という相を持つようになることが 語そのものの生成である。あらためて言って 語としての独立性を一般に体言のあり方に見立てて 名格という。
13−7 けれども ヤマト(T1)はそのままで名格であるから別としても ハ / アハ(T2)はそれだけでは独立した語としての名格であるとは言いがたいこともなお 事実である。とすれば その文表現においても なお無格体言にとどまると見ておくこともできる。言いかえると 名格を潜在的に持ちうる語として 無格名辞ではなく無格体言を想定することができる。《情態言》とよぶ言い方もあるようである。。
13−8 これら無格体言(ハ / アハ)を実際に名格として確定させたいと思えば

② ヤマト‐ハ ホ(秀)。 / ハレ(晴)。 / アハレ。

などと言える。ヤマト‐ハの方のハではなく 無格体言のハが ホ(秀)やハレ(晴)に変化して 名格になったという見方である。無格体言のアハも アハレに活用して名格となったのだと。言いかえると ハ→ホ(秀) / ハレ(晴) // アハ→アハレというふうに語が形成されたという見方である。

  • ハ ha → hö ホ は かんたんな母音交替である。アナ(己)ana〜önö己。
  • ハ→ハレの変化や アハ→アハレのそれは 自然想定相の子音 r の無格名辞ル・ラ・ロ・レがついた形である。我→我レ;己→己レ。

13−9 このとき すでに初めから名格でもあったヤマトという語は 中心第一主題相としての格活用(ヤマト‐ハ)が すでに現われうる。言いかえると この格活用詞の‐ハは 無格名辞だったハと同じであるだろう。

  • その種の・つまり格活用詞となるべき無格名辞を取り上げたからではある。

13−10 一般に 格活用(ハ / ガ / ノ / ヲ / ニ / ・・・)は 無格名辞から生成し確定されていったと見られる。
13−11 大和ハ・・・。という文例②におけるその中心主題格(T1ハ)をすでに前提して たとえばそれに応じて 大和ガアハレ〔トハ イカナルコトカ〕? と問い返すとき 関係主題格(T2ガ)が 現われる。
13−12 用言の形成も これら無格の名辞ないし名格の体言からであろう。動態用言(③)・状態用言(④)の例として。

③ 大和ハ 晴ル。 / 欲ル。 / 憐レム。
④ 大和ハ 愛シ。 / 欲シ。 / 哀レナリ。

文意があまり適当でないかも知れないが このような例示が 用言の形成を表わしていると思われる。
13−13 つまり欲ル / 欲シは 前章で例に出さなかったが これも hö 秀・穂・また ha ハからの派生だと考えられる。ここで 子音 h が中心主題格あるいは逆に先端部分主題というようなものの取り立て相だと踏んでいる。つまり 欲ル / 欲シは 主観が 或る対象を突出相・取り立て相において捉えた動態 / 状態を 相認識させる。
13−14 文例④の状態用言のほうから見てみよう。 ha-si 愛シ / hö-si 欲シは 何らかの形で中心主題相を表わす無格体言( ha ハ / hö ホ)が 強い指定相( s )なる無格体言( si シ)を従えて 形成されたのであろう。または逆に――子音の相認識には 対極相があって―― 中心的というよりは 部分的・周縁的な主題を取り立てる相( ha 端 / hö 穂〔中心突出とも言えるし 先端部分とも言える〕)で ソレダ( si )というふうに 派生し形成されたのであろう。こちらの場合には ハ / ホが 主観ないし心の動きの先端部分を 状態相で 提示していることになる。
13−15 この文例④は 

⑤ 大和ハ ウラ(心)ガ 愛シ。
⑥ 大和ハ 見ガ 欲シ。

と展開しえて こうなれば 三項展開のAハBガCの基本文型に落ち着く。
13−16 文例⑤の分析的な解釈としては 大和ヲ思エバ 心ガ 順出シ ソノ中央デ順定シテイル。/ あるいは 心ガ 表面ニ順出シテイル。である。同じく文例⑥については 大和ハソレヲ見ルコトガ 心ノ先端ニ(=ソノ頂点ニ)現ワレテイル。である。
13−17 ちなみに 文例⑥を

⑦ 大和ハ 見タシ。

というふうに表現すれば これは 動態用言(見=二次Ⅲ概念法活用)+欲求法の補充用言(タシ)から成る。このタシという補充用言が イタシ(甚シ)からの派生であるとすれば 文例⑦は 文例⑥の見ガ欲シと同じような相認識から成り立っている。
すなわち――'ita イタの子音/ ' /は 自同相 子音 t は不定指示相で―― イタシ(甚シ)は ita〜itö 甚 / ita-ru 到ル / ita-su 致ス / ita-daki 頂のイタから派生しているとされ 《それ自体( 'i )が 極限・頂点( ta / tö )にある》の相であるのだから hö-si 欲シ(たとえば←穂・秀‐シ)の《突出・頂点》の相と呼応している。
文例⑤のウラガ愛シが ウルハシとなるように この⑥の見ガ欲シも 欲シを甚シに代えて 見ガ‐イタシ > 見イタシ> 見タシとなりうると考えられる。

  • ただし 見タシは 合成されて一語となることはなかった。

13−18 あらためて言って 愛シ hasi は まず部分的・周縁的な主題( ha 端)が取り立てられ その心の先端部分(ハ)で何らかの心理的あるいは精神的な動きが 順出相( h )において 感じられるということを 指定( si シ)している相から来ると思われる。欲シは ホ(穂・秀)が ハ(端)よりは 体言名格として相認識が明瞭であるぶんだけ よりいっそう確実な心の動き(つまり欲求)を表わすようになったのであろうと。
13−19 あたかもそれらの相認識をそれぞれ保ってのように こんどは 動態用言が形成されれば 文例③の ハ‐ル(晴ル)/ ホ‐ル(欲ル)を得る。
13−20 そうして三項展開としては

⑧ 大和ハ 空ガ / 心ガ 晴ル。
⑨ 大和ハ 我レガ 欲ル。

文例⑨は まるで帝国主義の思想になってしまうが この用言論述の場合においても当然の如く AハBガCの文型があてはまるはずである。ちなみに 欲スルは 欲リ(Ⅲ概念法)−スからの派生である。
13−21 おおよそ以上のような内容を すでに語の生成の問題として 前章で実質的には見て来ていると思う。