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哲学いろいろ

第二章a    作業仮説

全体のもくじ→序説・にほんご - caguirofie050805 

第二章 作業仮説の目次
§6 作業仮説(§6〜§10)の概要
§7 文の分析――格知覚および格活用――

  • §§7−18 ハ格/ガ格/ヲ格などなど:以上 本日
  • §§7−19 論述収斂層の主−賓−述の格関係:以下→2005-09-01 - caguirofie050901
  • §§7−30 副次主題格:以下→2005-09-02 - caguirofie050902

§8 つづき――相認識および相活用――:2005-09-03 - caguirofie050903
§9 つづき――法判断および法活用――:以下→2005-09-04 - caguirofie050904
§10 作業仮説(§6〜§9)に立って次なる課題へ

第二章 作業仮説(§6〜§7−18)

§6 ここでの作業仮説を提示する。
6−1 発話者(内面)と文とを区別し 内面過程に 知覚 / 認識 / 判断の三段階を捉える(§6−4〜§6−12)。
6−2 次にその内面における三段階と文の分析との対応関係を捉える(§6−13〜§6−23)。

  • 知覚から が現われ 互いに対応する / 認識から を確定し 互いを対応させる / 判断が となり 互いに対応する。

6−3 そのあと 文の理解形式(文法範疇)としての内容を検討し整理するかたちで 前項の三つを提示する。

  • §7で 格知覚および格活用を §8にて 相認識および相活用を §9にて 法判断および法活用をそれぞれ 把握する。

6−4 発話者の主観内面における思想形成の過程を 最小限度において分析しておく。
6−5 文表現に到るまでの内面過程において 次の段階を区分する。
① 対象を知覚し ② 全体観としても認識し ③ 一つの結論として判断する
6−6 これらは すでに表現された文をめぐっての三つの理解形式(文法範疇)にそれぞれ対応するはずである。
①→格知覚 / 格活用(体言主題のそれらが代表的である)
②→相認識 / 相活用(語義そのものとその変化・派生などである)
③→法判断 / 法活用(論述用言の意思表示のあり方である)
6−7 内面における文形成の過程は あらためて次の如くである。
① 主題となるべき対象〔との関係〕の知覚
② 知覚した主題(すなわち対象〔との関係〕における問題点)をめぐる認識および思考
③ その結果としての主題についての判断
6−8 内面過程の第三段階③が 判断であることは 当然である。論述へ向けての意思決定がおこなわれるこの最終段階を経て その判断は 外へ文として表現されてゆく。(あるいは 判断しつつ同時に 表現に及ぶ。)
6−9 判断に到る前の段階②では 判断内容の可能性としていくつかの選択肢が 形成されている。それは 一定の主題を主題として認識したあと それにかんして思考したその内容である。
6−10 従ってその以前には 初発の段階①がある。まだ何を問題とするのか その把握すらほとんど明らかでないかたちで 対象をともかく主題と〔すべく〕して知覚する局面がある。

  • この対象は ここで一般に 文である。もしくは一旦 文表現というかたちに受け止めたところから 議論として扱う。

6−11 これら内面の三段階において 当然のごとくすでに 文の基本成分となるべき主題と論述とが 形成されつつある。
6−12 じつは第一段階①の知覚が すでに発せられた文じたいをその対象とすることを ここでは想定している。すなわちその文つまりその中でも一定の論述を知覚することから始まる。この論述を新たな一主題として それにかんする新たな論述を形成していくことになる。
6−13 文の理解にかんして 内面過程における①知覚 / ②認識(かつ思考) / ③判断それぞれの持つ性格内容が 密接にかかわっている。
6−14 内面の三段階それぞれの性格内容に対応して 文の理解形式が得られる。

内面過程の三段階 外化された文の理解形式
①対象の知覚→ →格 case
②知覚された対象をめぐる認識→ →相 aspect
③相認識された対象をめぐる判断→ →法 mood

6−15 ここでの《対象》は――文表現を前提としたうえでも―― さまざまである。
6−16 一つに大きく広く発話者のおかれた自然的・社会的な場じたいが 対象でありうる。人間関係や歴史的な背景までを 文理解に際して 認識し判断しなければならない。
6−17 だが話を文じたいに絞るとすれば そこでは今度は 一定の文表現が全体として対象となるだけではなく 確かにその中の成分や語句などの要素がそれぞれ 対象となっていく。
6−18 要素ごとのさまざまな対象にかんして それぞれに 格知覚 / 相認識 / 法判断の三つの理解形式が かかわっていく。
6−19 たとえば

言葉ハ 人ガ 語ル。

の文例にかんして まずその一文が発話されたこと自体を格知覚し それは 音韻や文字を通しての格知覚となっている。そのときには 発話者の人格の知覚も伴なっているかも知れない。これらすべての格知覚について 一定の相認識として確定し それでよいと法判断することも伴なわれていくと考えられる。

  • それではいけないという法判断をも含めなければならないかもしれない。

6−20 言葉/ハ/人/・・・といった語ごとの相認識を伴ないつつ 文の成分として主題(言葉ハ / 人ガ)や論述(語ル)それぞれの相認識を確定し 主題格や論述格を認定する。このとき 格活用の認定や 相認識の確定のそれぞれにあたって 一つひとつ法判断をほどこしていると考えられる。
6−21 やがて 論述用言(語ル)の法活用を認識し その法判断(このばあい 存続法・肯定相など)じたいを法判断するに到る。
6−22 このような理解の手続きを経て 自らの文表現に移ることになる。
6−23 これら三つの理解形式それぞれについて 詳しく見てみよう。


§7 文表現をめぐる格知覚および格活用について
7−1 一定の文が知覚されたとき それは 格として主体(人)に受容されたという。
7−2 文そのものだけではなく 特には基本成分(主題 / 論述)に関しても それぞれの格知覚が成立する。
7−3 ことばが文として発せられたなら 特定のこと(論述)として条件づけられたことになる。この条件づけは その特定の状態(論述・文意)に落ち入った( casus = fallen )と見なすことである。
7−4 発話者も その文の表現主体として 条件づけられてくる。

  • ただし 必ずしも一対一の対応というほどの意味ではない。

7−5 これは 表現にかんする文の責任者としての人格のことである。
7−6 格知覚にかんしての文の分析は すでに次のようになると考える。

(内面) (外面)
表現主体: 表現=文(言葉ハ人ガ語ル)
話者(人格): 中心主題(コトバ)+関係主題(ヒト)+論述主題(カタル) :主題提示層
話者格: 中心主題+ハ格(言葉ニツイテイエバ)+関係主題+ガ格(人ガドウスルカダガ)+論述(語ルを恒常の肯定相におく存続法に活用) :(同上)
〔我ハ言ウ〕: 言葉ハ 人ガ 語ル。
論理上の格関係: 対格(O)(言葉ヲ)−主格(S)(人ガ)−述格(V)(語ル) :論述収斂層

7−10 表現主体の分節して外化した文は その発話者の人格(また文体)によって統括されている。
7−11 文そのものに即しては その格理解が 二つの層に分かれている。

  1. 主題提示層:第一中心主題格+関係第二主題格+論述主題格
  2. 論述収斂層:主格−賓格(対格 / 与格)−述格などの格の相互の関係(意味関係)。

7−12 いまの文例で まず主題成分の中心を占める語《言葉》が 第一の主題であり これが活用格《ハ》を伴なってまず中心主題という枠組みをはめられるかたちとなる。
7−13 主題成分の第二に 中心主題である《言葉》にかかわる一つの主題を特定する。《人》という関係主題である。《人》という体言を文の中の主題に充て これをさらに関係第二主題に活用させた。そのしるしに 活用格《ガ》が用いられる。
7−14 仮りにいまの文例を 《言葉(または 文)ハ人ヲ語ル》と言いかえるなら おそらく次のように分析される。ハ格の中心主題が ガ格の関係主題を兼ねる場合となる。

T1 T2=T1 T3 T4=P
文ハ 〔文ガ〕 人ヲ 語ル。
中心主題格 関係主題格 副次主題格 論述格(法活用) :主題提示層
x(掛け算の如く)
現象主格(S) 対格(O) 述格(V) :論述収斂層
  • かんたんな別の例示として たとえばフランス語に 中心主題格の提示に似た事例が見られる。変則的な分析が生まれる。
中心主題格 S−V−C.
Le temps, c'est de l'argent.
Time, :主題提示層
it is money. :論述収斂層
時ハ 〔時ガ〕金−ナリ。

7−15 このようにして――すなわち 中心 / 関係 / 副次(副次関係主題ということである)なるそれぞれの相の主題格を提示する文法を持ちえて―― 主題提示層が活きている。
7−16 《文 / 人》という体言にかんして 文ハ / 文ガ / 人ガ / 人ヲなどの変化を 体言主題の格活用という。これは 主題提示層が先行してのことだと思われる。
7−17 すなわちこの形態変化(‐ハ / ‐ガ / ‐ヲ)は 格知覚の内容に応じて変化して分節していることだと考えられる。そしてそれは 初めに 体言主題の性格内容としての相を分類することにもとづくと思われる。
7−18 すなわち単純に・そしていまの三つの例としては

  • T1ハ : 主題の第一に表出する文の中心主題である。
    • この中心主題である相を持たせることによって その中心主題格の活用とする。
  • T2ガ : 中心主題に直ちにかかわる第二主題とするかたち。
    • この相を帯びさせ その関係第二主題格の活用とする。
  • T3ヲ : 第三以降の主題を副次関係主題という。
    • いくつかの主題どうしの間で いわゆる主客の関係が出来るであろうから その客体となる主題を 賓格(賓格主題)と名づける。
    • 賓格のうち 直接的・全面的・全体的に主客の対向関係が成り立っている場合 対格もしくはヲ格とする。話者の心理として直接・全面的だという場合を含む。
    • 賓格のうち 間接的・部分的に主客の対向関係にある場合 与格もしくはニ格とする。
    • そのほか 体言主題は いくつにも格活用するわけだが 属格をあげておく。文ハ人ガ語ルの文例で 語ルを 語リとして 人ガ語リのごとくまとまるならば この関係主題格のガ格は 属格の役目をになっている。ノ格である。
    • 順序として T3=ノ格(属格)を持ってきて T4=ヲ格(対格) T5=ニ格(与格)として 基本の格活用を捉えるとよいかも知れない。

これらの主題格活用は 文表現が一つひとつの主題を それぞれそのまま絶対的に提示していく(T1+T2+T3+T4+・・・・)という生成の形式から出て来ているものと思われる。

  • したがって 主題の活用格が定まらない状態にある体言の語が 文のなかに言い出されたかたちは 格として 絶対格ということとする。絶対格は 何にでもそのあと活用していくことが出来ると言いうる。
  • 文の外なる話者格によって統括されているという現実のみによって 文の中の主題としての位置(つまり格)を維持しているのが 絶対格である。無格でもよい。

(つづく)