第九章
全体のもくじ→序説・にほんご - caguirofie050805
第九章 つづき――能格構文をめぐって――
第九章 能格構文をめぐって AハBガCなる基本文型の一般性について もくじ
§31 ウラルトゥ語の能格構文:→本日
§32 エスキモー語の能格構文とまとめ:→2005-09-20 - caguirofie050920
§31 能格構文という文型 これを基軸とする文法を持った言語がある。この構文ないし言語類型は 片や始原相を保つAハBガCの文型 片やもっぱら格関係の論理を直線的に追うようになったS-V-O構文 これら両者のちょうど中間に位置するかに思われる。
31−1 中間というのは 足してニで割ったという意味ではなく また 単に錯綜しているというわけのものでもない。それとして独自の文法を形作っている。むしろ独自性を持って 誇らかでさえあるように見える。
31−2 現在のトルコ東部のヴァン湖周辺に 古代(紀元前九〜六世紀)住んでいたウラルトゥ*1(ピアイニ)民族のことばが たとえば能格言語だと言われる。
31−3 シュメールやアッカド(バビロニアおよびアッシリア)の用いた楔形文字を採用して碑文などに記録した資料によると いわゆる他動詞文が 次のような能格構文になるという。
〔Urartu-1〕: | (D)Ĥaldi-e | euri-e | ini | aŝe |
---|---|---|---|---|
逐語訳: | (神)はるぢ-ニ | 主-ニ | コノ | 楯 |
(I)Rusa-ŝe | (I)Erimena-himi-ŝe | uŝt-u-ni | uiguiŝia-n-edini. | |
(王)るさ-ガ | (王)えりめな〔ノ〕-子-ガ | 捧ゲタ-ソレ〔ヲ〕 | 命(長寿)-ノ-タメ |
- 和訳:主なる神ハルヂに この楯は エリメナ王の子・ルサ王が 長寿を願って 捧げた。
31−4 構文として 次の部分を取り出して 検討しよう。
〔UR-1a〕: | ini aŝe | Rusa-ŝe | uŝt-u-ni |
---|---|---|---|
直訳: | コノ楯 | るさ-ガ | 贈ッタ-ソレ |
文型: | A〔ハ〕 | B-ガ | C-A’〔ヲ〕 |
31−5 コノ楯( ini aŝe )ヲ贈ッタのだから ini aŝe が 対格活用であることにまちがいない。しかも 与格活用(主ナル神はるぢ-ニ Ĥaldi-e euri-e )は 形態としてはっきりしているのに対して その対格活用ははっきりしない。つまり 無標識である。
31−6 まず上にA・B・Cの三項展開で解釈したように捉えるなら 文末の -ni (ソレ〔ヲ〕)は まさに中心主題A( ini aŝe )と呼応している。すなわち この ini aŝe (コノ楯)が S-V-O構成では O=対格にあたる。この文末の -ni は 代名接辞と呼ばれる。論述用言の法活用形に添えられる形の代名詞である。
〔UR-1a〕: | ini aŝe | ・・・・・・ | ・・・-ni |
---|---|---|---|
文型: | A〔ハ〕 | ・・・・・・ | ・・・-A’〔ヲ〕 |
主題提示層: | 主題格(コノ楯ハ) | ・・・・・・ | ・・・-同格主題 |
・ | ↓ | ・ | ↓ |
論述収斂層: | 対格(コノ楯ヲ) | ・・・・・・ | ・・・-対格(ソレヲ) |
31−7 すなわちまず このように重層的な提示とその理解が成り立つとすれば 文生成の始原相に近いと言いうる。AハBガCの文型に密接なつながりを持つと考えられる。
31−8 しかもここで 論述C(←T3=P)に注目できる。これ=すなわち uŝt-u-ni (ソレヲ贈ッタ)は 一気に分析するならば 次のようである。
〔UR-1b〕: | uŝt | -u | -0(無標) | -ni |
---|---|---|---|---|
相認識: | 動態相 | 完了相・他動相 | 動作主相 | 他称相 |
〃 | 《前ニ出ル》 | 《出ル→出ス》 | 3.sg.《彼ガ》 | 3sg.《ソレ》 |
品詞: | 用言 | 補充用言 | 代名詞(接辞) | 代名詞(指称体言) |
格関係: | 述格 | 述格 | 主格 | 賓格(対格) |
〃 | 《差シ出シタ・ | 贈ッタ》 | 《彼ガ》 | 《ソレヲ》 |
論述収斂層: | V | 〃 | S | O |
または: | Cシタ | 〃 | Bガ | B1ヲ |
もしくは: | C | 〃 | Bガ | Aハ(⇒Aヲ) |
31−9 まず論述提示層としての V-S-Oなる格関係が 明確である。動作主(S)を表わす標識はないが その無形態によって この場合 三人称単数の主格語が示されている。しかも 対格も この論述Cもしくは述語部Vに 示されている( -ni )。言いかえると この大きな述語部Vの中に いまのV-S-Oの基軸となる格関係が 埋め込まれている。
31−10 繰り返せば -0- (ゼロ標識)を含めて uŝt-u( V )-0( S )-ni( O ) というように 論述収斂層の直線的な意味関係が 構文として 成り立っている。と同時に 一文全体〔UR-1a〕では あたかも AハBガCの文型としても成り立っているかのようである。
31−11 重ねて述べよう。一文全体〔UR-1a〕としては AハBガCのわれわれの基本文型にのっとり 《楯ハ るさガ 贈ッタ》と表わしつつ 論述部( uŝt-u-0-ni )においては ちょうど一個のS-V-O構文(《彼ガ ソレヲ 贈ッタ》)を確立している。
主題提示層: | A〔ハ〕 | Bガ | C |
---|---|---|---|
直訳: | コノ楯 | るさガ | 贈ッタ |
〔UR-1a〕: | ini aŝe | Rusa-ŝe | uŝt-u-0-ni |
部分訳: | ・ | ・ | 贈ッタ-彼ガ-ソレヲ |
論述収斂層: | ・ | ・ | V-S-O |
31−12 ここで 二つの見方ができる。一つは もはやこの構文は単純だというそれである。なぜなら 論述部に S-VないしS-V-Oの構成が現われたなら これを基軸として 一文全体も そのS-V-Oの直線的な格関係で成り立っているはずだというものである。
31−13 もう一つは いやそうではなく もっと複雑だという見方である。なぜなら 他動詞文において S-V-O構成 というよりは 主‐賓‐述の格関係が 論述収斂層において現われるのは どのような文法のどの言語であっても 当然のことなのだから もっぱらそれに固執するわけにはいかないというものである。
31−14 この論述部 uŝt-u-ni を仮りに英文で 《dedicated-he-it 》の如く S-V-O構文として理解するのみに終わらせるわけにいかないという反論である。確かに 《捧ゲタ-彼ガ-ソレハ(=Aハ)》というように AハBガC文型として理解する余地がある。つまり 《ソレ -ni 》も そしてこの語に対応する《コノ楯 ini aŝe 》も いづれも無格で 絶対格提示によっていることも 事実であるからだ。
31−15 そうすると 要するに問題は 第一中心主題(T1=この場合 ini aŝe )が もはや中心主題格の提示の相(→Aハ)を 失ってしまっているかどうかにあると考えられる。
論述部に S-V-O構成を 形態的にも明確にかたちづくっているからには S-V-O構文の文法に近づいたこと自体は もはや争えないことである。
31−16 同じくそうすると 第一主題( ini aŝe )と関係第二主題( Rusa )とのそれぞれの格活用が どのような性格内容として成り立っているのか ここに焦点が移る。かたちとして 中心主題とおぼしき体言の格活用は 0 (ゼロ標識)で 関係第二主題については -ŝe である。そして この -ŝe なる格活用が あらかじめながら 能格( ergative )と呼ばれる格活用である。
31−17一筋縄ではいかないので じっくり見ていこう。あらかじめの結論としては 第一主題(T1)が 中心主題格(Aハ)に譬えるべき絶対格(T1-0)だと考えられる。格活用の未確定の状態にある絶対格が そのまま 活用したあとの形態として相認識された事情のもとにある。
または のちにも見るように 中立格(T1-ni)に活用している形態と見うる。
また第二主題(T2)は 関係主題格(Bガ)に譬えるべき関係格もしくは能格(T2-ŝe )に活用していると捉える。
そうして これらに関するかぎり AハBガCの基本文型の持つ始原的な主題提示層を なお十全に保っているというものである。
31−18 まず初めに 論述部では確かに 形態的にも S-V(他動詞文では S-V O)構成を形作るようになっていることを確認しておこう。
31−19 たとえばいまの論述部 uŝt-u-ni にかんして これが一人称単数の動作主であるばあいには
〔UR-2〕: | uŝt-u | -bi | -0 |
---|---|---|---|
直訳: | 贈ッタ | 私ガ | ソレヲ |
の如く変化した形態で表わされるという。つまり主格語(S=私ガ)および対格語(O=ソレヲ)をともに表示しているという。
- あるいはこの例では 0(無標識)=私ガ(S)および bi =ソレヲ(O)であるかもわからない。はっきりしていることは 他動詞の述格(=語幹+-u- )のあとに 接辞 -ni が来ると それによって 三人称単数の主格語および三人称単数の対格語を同時に表わすことになること。また それとはちがって 代名接辞 -bi が添えられると 一人称単数の主格語および三人称単数の対格語がやはり同時に表示されるということのようだ。
31−20 したがって 再び uŝt-u-ni( 《 dedicated-he-it 》)に戻って そこでの主格語( he = 彼ガ)が 能格( -ŝe )に活用している Rusa-ŝe (るさ-ガ)に対応するのだから この一面としては 明らかにこの能格( -ŝe )を 始原相の関係主題格(Bガ)にそのまま無条件にあてはめることは 難しい。と言わなければならない。
31−21 それゆえにも このBガが表わしうるその同じ動作主格を表していても ウラルトゥ文の第二主題格(T2-ŝe )は 別の性格内容をそこに捉えて たとえば能格とよぶ。
31−22 それでは 他方での S-V-O構文の主格たるSにあたるかといえば 動作主格であることを共通にしているのは やはり間違いないにしても 事情はかなり異なるようである。
31−23 それは端的には 同じ動作主格を表示させつつも こんどは自動詞文では 別の格活用があてられるからである。能格( -ŝe )とは別の形態および性格内容となる。
31−24 自動詞文の例としては
〔UR-3〕: | uŝt-a-bi | (I)Menua-ni | (I)Iŝpuini-hi |
---|---|---|---|
直訳: | 前ニ出タ(→自ラヲ送ッタ)-彼ガ | 王めぬあハ | 王いすぷいに〔ノ〕子 |
文型: | C―B(=A)ガ | Aハ |
- =《イスプイニ王の子 メヌア王は 〔遠征に〕出た》
31−25 すなわち分析としては 次のごとくなる。
〔UR-3〕: | uŝt- | a- | bi | Menua-ni |
---|---|---|---|---|
相認識: | 動作相 | 完了・自動相 | 動作主相 | 体言主題‐主題提示相 |
〃 | 《出る》→ | 《出向イタ》 | 3.sg.《彼ガ》 | 《めぬあ‐ハ》 |
格関係: | 述格 | 〃 | 主格 | =(同格)=中心主題格 |
論述収斂層: | V | 〃 | S | =S |
主題提示層: | C | 〃 | B(=A)ガ | Aハ |
31−26 ややこしいことであるが 接辞の -bi は 他動詞につくと(つまり 語幹+-u-bi となると)主格(1 sg. )および対格(3 sg.)を表わし 自動詞につくと 語幹+-a-bi の形となって 自動主格( 3 sg. )を表わす。
31−27 しかも――きわめて面倒に思われるように―― この自動詞文の主格語は 実際には 第一主題の Menua (めぬあ王)であるそのとき その格活用が -ni となっている。この格活用 -ni は 他動詞文で論述部 uŝt-u-ni に現われたその -ni である。主格( 3 sg. )かつ対格( 3 sg. )を表示するのに用いられた接辞の -ni である。
31−28 さらに込み入って来るのだけれど この代名接辞ないし格活用の -ni は 他動詞文で実際の対格語(B1ヲ/ または S-V-Oの O)を表わすのにも 用いられる。つまり〔UR-1a〕の文例に この -ni を用いることができる。
〔UR-1b〕: | ini aŝe-ni | Rusa-ŝe | uŝt-u-ni |
---|---|---|---|
直訳: | コノ楯‐ハ | るさ‐ガ | 贈ッタ‐彼ガ‐ソレヲ |
分析: | →中心主題格(Aハ) | ・ | ・ |
〃 | →対格(Aヲ) | ・ | ・ |
31−29 けれども これで むしろ事態は明るくすっきりしてきたようにも考えられるのではあるまいか。格活用および代名接辞の -ni は おおむね日本文の格活用 -ハに相当し まず中心主題格(Aハ)を表わす。そして自動文では 主格(Aガ=Bガ)を また他動文では対格(Aヲ)をそれぞれ 表示することになるからである。文例〔UR-3〕および〔UR-1b〕に参照されたい。
31−30 格活用を兼ねる代名接辞(もしくは その逆)について 整理することができる。論述収斂層の格関係に焦点をあてるとすれば 次のごとく整理しうる。
・ | 主格 | 対格 | 完了相述格+ | 主格+ | 対格 | |
---|---|---|---|---|---|---|
自動文: | -ni | ・・・・・ | 語幹-a-di | 1 sg. | ・・・ | |
〃: | 〃 | ・・・・・ | 語幹-a-bi | 3 sg. | ・・・ | :〔UR-3〕 |
他動文: | -ŝe | -ni | 語幹-u-bi | 1 sg. | 3 sg. | :〔UR-2〕 |
〃: | 〃 | 〃 | 語幹-u-ni | 3 sg. | 3 sg. | :〔UR-1a / 1b〕 |
31−31 もしここで 論述部(上の表の中で 《完了相述格+主格+対格》のひとまとまり)を別として文のほかの成分にかんして 主題提示層にのみ焦点をあてれば その主題格活用は次のように見られるかも知れない。
基本文型式: | 中心主題格(Aハ) | 関係主題格(Bガ) | |
---|---|---|---|
ウラルトゥ文: | A-ni | 自動文:B-0 | ⇒(Bガ=Aガ) |
〃: | A-ni | 他動文:B-ŝe | ⇒(Bガ+Aヲ) |
31−32 このウラルトゥ語について明らかになったと思われることは 以下のことである。
31−33 以上に見たように同じ動作主格でも 自動/ 他動の相のちがいによって はっきりとその格活用( -ni / -ŝe )をそれぞれ使い分けるところに 能格言語の特徴があると言われるそのことは 次の内容を語っていることでなければならない。
31−34 まず第一にウラルトゥ文では 主題提示層(AハBガ〔C〕)と論述収斂層(S-V-O)とが それぞれ一文全体と論述部とに分かれて しかも同時に共存することである。
(1)論述部では uŝt-u-ni = 《 dedicated-he-it 》の如く S-V-O構文に限りなく近づきつつ
(2)第一主題(T1)が中心主題格(T1 -ni =Aハ)として提示される形式を保ち これは 自らが論述収斂層を兼ねる形式をも保ちつづけている。すなわち 論理直線的な格関係では 主格(Aガ←Aハ)(つまり自動文)になったり 対格(Aヲ←Aハ)(つまり他動文)になったりできる。
31−35 第一主題(T1)は 格活用 -ni をつけず 絶対提示のままでも 中心主題格(Aハ)になりうる。ini aŝe =T1がそのままでも(〔UR-1〕) 格活用をつけても( ini aŝe-ni =〔UR-1b〕) 中心主題相が提示されうる。日本文でも このAハのハは 省略されうる。
31−36 ただし第二主題(T2)が 関係主題格(Bガ)を十全に幅広くは 形成しない。言いかえると 部分的に=つまり他動文の主格としてのみ BガないしT2 -ŝe という格活用を形成する。
31−37 そうすると どういうことになるか。ウラルトゥ文法にかんしては ある種の仕方では AハBガC文型から S-V-O構文に移行する中間段階に位置づけることができるのかもわからないが たとえそうだとしても しかも同時に 新たな第三種というべき独自の文法を形成していると言うべきだと思われる。
31−38 これは ヘブル文やインドネシア文のようなさまざまな変形・再編成を伴なった中間混合種でもなく さりとて両極をあたかも自由に移動しうるような幅広い特殊な構文としての中国文の如くでもなく きわめて明確に第三の種類を形作っている。
31−39 その成り立ちをそれとして確定するためには 独自の用語を定めておくのがよい。
31−40 まず絶対提示の中心主題格(Aハ)にあたる格活用=すなわち 自動文でも他動文でも同じ一個の格活用 -ni これを たとえば中立格とよぶのがよい。または 無標識(この -ni の無)としては 固有の意味で 絶対格とよべる。
31−41 したがって これに関連する意味でも 関係主題格(Bガ)にあたる格活用が 能格( -ŝe )なのである。
始原相: | T1(中心主題相) | T2(関係主題相) | |
---|---|---|---|
・ | ↓ | ↓ | |
二層構造: | 中心主題格(Aハ) | 関係主題格(Bガ) | :日本文・韓国文 |
・ | ↓ | ↓ | |
第三種文法: | 中立格(A-ni) | 能格(B-ŝe) | :能格言語(ウラルトゥ文) |
〃 | ⇒自動主格/ 他動主格 | ⇒他動主格 | |
・ | ↓ | ↓ | |
論述収斂層のみ: | 主題提示の相およびその層の消滅 | 主題格という概念が消える | |
〃 | ・・・ | 主‐賓(対/与)‐述の格関係 | :S-V-O構文(英文など) |
31−42 AハBガC文型に倣ってウラルトゥ文の構造を言い表わすなら
A-ni B-ŝe C(=V-S-O)構文
となる。または
X-ni Y-ŝe Z(=V-S-O)構文
・・・X:第一主題→ 中立主題;中立格
・・・Y:第二主題→ 能格主題;能格
・・・Z:論述主題→ 論述収斂層の縮約形態(V-S-O)
と言うべきかも知れない。
31−43 それは 特に――Aハと A-niとの類似はよいとしても―― BガとB-ŝeとの異同が 異なるほうが大きいからである。自動文 / 他動文の区分にかかわる相違点のほかには Bガが第二主題(T2)の絶対提示から関係主題格になっているということにかかわって このBガは Bノという属格用法(我ガ家など)をも持つという点にもある。
31−44 中立格(A -ni ≒ Aハ)は放っておいてもよいとして 特に能格が その標識( -ŝe )をまったく消してしまえば――つまり 消しても 英文のように語順などで文意の理解に支障がないとなれば―― いよいよ S-V-O構文の独立した直線的な文表現の形態に近づいていくと言ってよいのかも知れない。確かにその基礎は 兆しとして[?]論述部の中でのV-S-O形式が すでに確定している。
31−45 議論を再開するわけではないが S-V-O構文の言語について 関連したことがらを見ておこう。
31−46 コノ楯ハるさ王ガ捧ゲタ〔UR-1a〕の文例を 英仏文が次のように言うとすれば 逆に面白いことが見られる。
構文: | S | V〔-S〕 | O |
---|---|---|---|
〔UR-1a〕-ENG: | Rusa | offered | this shield. |
〔UR-1a〕-FR: | Rusa | offrit | ce bouclier. |
何も変わったところはないのであるが 面白いことには これらでは 名詞( Rusa / this shield / ce bouclier )が 主格(S)や対格(O)の活用標識を失くしてしまっているから これらは 絶対格提示なのである。その意味では 始原相(Ti のそのままの提示)に戻っている。
- 独露文等々では 失くしていない。
31−47 ただし 主題提示層がよみがえったわけではない。高々一個の主題を取り立てる相とその表現形式(たとえば 強調構文など)が用意されているということだと思われる。
31−48 格活用の標識を保っている言語・たとえば露文では その標識の存在によって語順がほとんど(もしくは ある程度)自由であるから 主題の取り立ては おもにその語句を最後に=文末に置くことによっているようである。
〔UR-1a〕-RUS: | Этот щит | Руса | посвятил. |
---|---|---|---|
・ | Etot sŝit | Rusa | posvyatil. |
直訳: | コノ楯 | るさ | 捧ゲタ |
分析: | O | S | V |
この文にかんする語順は ほかに S-O-V / S-V-O / V-S-O / O-V-Sのさまざまな順序で言えるようである。
- この場合 Etot sŝit コノ楯という語句が 主格・対格で同形であるので 仮りに《楯ガるさヲ捧ゲタ》という文意にならないのかといえば それは Rusa という語の格活用が問題になるとともに 文外の現実理解によってそうはならないのであろう。
31−49 なおウラルトゥに地理的にも近いカフカースの地の諸言語も 能格言語と言われる。
31−50 それら諸言語はそれぞれに事情がちがっているようであるが たとえば現代グルヂア文では 他動相・述格に対する主格語が 過去時相で能格活用を そして現在時相では そうではなく中立格活用を――自動文と同じように―― 要求するという形態に変化しているということである。
31−51 そのような変化の事情が 能格文法からさらに S-V-O構文文法への移行を 歴史的に指し示しているのかどうか そういったことはわからない。おそらく言語の中には まるっきり変化してしまうものもあるかも知れないであろうし 一般には 部分的に相互の影響を受け合う・与え合うということなのではないかと思われる。
Ourartou.
- Arame roi d'Ourartou 850-833.
- Sapur I roi d'Ourartou 833-825.
- Ishpuini ou Ishpouhini roi d'Ourartou 825-806.
- Menua ou Menona roi d'Ourartou 806-788.
- Argishti I roi d'Ourartou 788-766.
- Sapur II roi d'Ourartou 766-733.
- Rusa I roi d'Ourartou 733-714.
- Argishti II roi d'Ourartou 714-685.
- Rusa II roi d'Ourartou 685-645.
- Sapur III roi d'Ourartou 645-635.
- Sapur IV roi d'Ourartou 635-?.
- Erimena roi d'Ourartou.
- Rusa III roi d'Ourartou ?-590.
http://web.genealogie.free.fr/Les_dynasties/Antiquite/Proche-Orient/Proche-Orient.htm