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哲学いろいろ

体言と用言


 1. ひとは 自己表現をして生きます。


 2. 自己表現のうち ことばを用いる表現は 文の積み重ね(つまり文章)によって成り立ちます。


 3. 自己表現を 思想(考え)を表わすものとすれば 思想の単位体が文です。


 4. この文は 主題と論述から成ります。問いと答えです。


 【文例α】 文は  人なり。
  ・・・・・・・主題――論述。



 5. 論述も一種の主題ですが 思想としての答えをそこに集中させるので ほかの主題とは別個の役割りをにないます。言いかえると 文を締めくくる役目をにないます。


 6. 一般に主題の核として用いられるのは 体言です。そのつてでは 用言は 論述に用いられます。


 7. 体言の《体》とは 主題に用いられるということを表わすと思われます。あるいはその主題の核としてその《からだ》です。


 8. これまで主題と言ってきたのは 実際には《主題部》のことで これは細かくは 主題体言+格活用――たとえば 《文+ハ》――から成ります。


 9. 格活用もしくは活用格とは 主題をどのように提示するかを表わします。《文は》のハ――ハ格と言います――は この《文》という主題を その文の中心主題として提示するというときの標識です。

 10. 仮りに 


 【文例α‐1】 文は 表現内容が 人なり。


 と言うとすれば 《表現内容+ガ》といういまひとつ別の《主題+格活用》が表わされます。


 11. このガ格の用法は それが受ける主題を 第二主題として提示します。かつハ格が受けている中心第一主題に関係する何らかの主題を特定して示します。ゆえに 《関係主題》と言えます。


 12. これら《中心主題+ハ》+《関係主題+ガ》から成る問いを受けて 答えを述べるのが論述主題です。


 13. 文例αの論述部は《人なり》ですが この場合 《人》は 主題に用いられますから体言です。この体言を受けて 話者の思想を締めくくるのは 《なり》という部分です。


 14. 論述に用いる語を用言というと言いましたが この場合は体言の《人》に添えられるかたちであるゆえ 《なり》は補充用言となります。《そうである》という話者の思想のあり方を示すかっこうです。


 15. 《そうだとは思わない》という話者のばあいには


 【文例α‐2】 文は 人ならず。


 というふうに 論述部の補充用言が 《なら+ず》というかたちで示されます。《ず》が 否定を表わします。


 16. 論述の用言(もしくは補充用言)がになう思想の締めくくり方は 法活用と言います。法とは mood と言い 話者の《気分》のことです。《なり》は 断定する気分であり 断定法活用です。《ず》は 否定法活用です。


 17. 言いかえると 日本文は 次のごとく成り立っています。


 【α‐1】 文‐ハ  表現内容‐ガ  人‐なり。
 ・・・・・中心主題――関係主題―――論述部
 ・・・・・体言+ハ格―体言+ガ格――体言+補充用言
 ・・・・・(格活用)――(格活用)―――(法活用)


 * 補充用言は 助動詞と呼ばれています。
* 用言:
   《こと》を表わすもの:動詞
   《さま》を表わすもの:形容詞・形容動詞
 * 補充用言には 助動詞のほかに 一般の文法で助詞と呼ばれるものも 入ります。
 * あらためて 補充用言:論述部にあって 体言もしくは用言に付いて 話者の判断のあり方(=法活用)を示すもの。
 * 【α‐1】・・・人‐ナリ。:断定法の補充用言のナリ
   【α‐2】・・・人‐なら‐ズ:否定法の補充用言のズ
   【α‐3】・・・人‐なる‐カ:疑問法の補充用言のカ