うつくしさに打たれたきみは だれになるのか
○ (あこがれ【憧れ】:大野晋・古語辞典) ~~~~~
《アクガレの転》
1. ふらふらと行く。
・五条の東へ~~れゆき給ふに(御伽草子・扇流し)
2. 気をもむ。
・〔父が〕打たんともがく杖の下 母は~~れ〔娘ヲカバウ〕(近松・大経師・中)
○ (あくがれ【憧れ】)~~~~~~
《所または事を意味する古語アクとカレ(離れ)との複合語。
心が何かにひかれて もともと居るべき所を離れてさまよう意。
後には 対象にひかれる心持ちを強調するようになり 現在のアコガレに転じる》
1. 本来いるはずの場所からふらふらと離れる。さまよい出る。
・〔男ノ言葉ニ乗ッテ〕この山里を~~れ給ふな(源氏物語・椎本)
2. 離れる。
・〔夫婦ノ〕御中も~~れて程経にけれど(源氏・真木柱)
3. (何かにさそわれて)心がからだから抜け出てゆく。宙にさまよう。
・ 物思ふ人の魂は げに~~るるものになむありける(源氏・葵)
4. うわの空になる。
・〔恥ヅカシサニ〕心も~~れにけり(源氏・東屋)
5. 浮かれる。
・花に~~るる昔を思ひ出して(延慶本平家物語二・判官為平家追討)
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すなわち
○ あく‐かれ:心が何かにひかれて もともと居るべき所(=アク)を離れ(=カレ)てさまよう意
だと言います。だったら すでに《真理ないし美》なる庭に行ってさまよっている。のかも知れません。
次は 推測による議論です。
アクは 《わたし←わたくし》なる語に入っているのではないか。という空想です。
《わたくし》の語源による分析です。
○ わ(倭:たぶん→和)
は マレーシャ・インドネシアなどが属するアウストロネシア(南島)語の 《 orang =人》が《ワ》という発音にちぢんで用いられたのではないかという空想を抱いています。そこから:
○ わ‐つ‐あく: 人(=ワ)‐の(=ツ)‐場(=アク) > わたく > わたく‐し
ただし・あるいは 南島語族で《 aku 》は 《わたし》の意味の語でもある。
○ わたくしの《し》:《それ‐が‐し / なに‐が‐し》のシ。《が》は《の=つ》(属格)。この《し》は 日‐向か‐し(=ひむがし=東)のシでもあり 《向き・方向》を表わす。その人を取り立ててその方向で指し示す。《こちらの方・どちら様》といったように。
なお 《つ》:《家(や)‐つ‐子》⇒《やつこ(奴)》。《ま(目)‐つ‐け(毛)》⇒《まつげ(睫毛)》。
です。