caguirofie

哲学いろいろ

第六章b

全体のもくじ→序説・にほんご - caguirofie050805

第六章 用言の法活用組織の生成(§17)

用言の法活用組織の生成 もくじ
§16 前提――作業仮説の整理――:→2005-09-10 - caguirofie050910
§17 生成の輪郭(基本六段活用組織から第二次派生):→本日
§18 法活用組織の展開(イ一段;イウ二段活用):2005-09-12 - caguirofie050912
§19 つづき(エウ二段活用)
§20 つづき(オウ二段活用)
§21 いじょう動態用言の法活用のまとめ
§22 状態用言の法活用組織の生成:2005-09-13 - caguirofie050913

§17 ここから第二次の活用組織の生成を探っていこう。まず第二次全般にわたる特徴をのべよう。
17−1 用言の法活用が 用言原形 0 -ö から出発しつつも もはや強変化(Ⅲ -i )に従わない場合 それは 数種の第二次・法活用形式を作っていったものと思われる。
17−2 なぜそうなったか その理由は 語例を挙げてその特徴を捉えつつ 考えていこう。
17−3 基本六類の活用形態ごとに 第一次に倣いつつも 別種の形式を採用することになったのが 第二次組織である。おもに次の数種にかんする解明が 課題である。

一次原形 0 höröbö moyö
二次原形 0’ mi höröbö-i moyä 〔kö-i > kï > ki〕
二次Ⅰ mi hörö-b ï moyä > moye
二次Ⅱ mi-rä > mire 〃-bö-rä > -bure moyö-rä > moyure kö-rä > kure
二次Ⅲ mi 〃-b ï moyä > moye kö / ki
二次Ⅳ mi-a > mi-ö > miyö 〃-bï-a > -bïyö moyä-a > moyeyö kö-a > köyö
二次Ⅴ mi-rö- > miru- 〃-bö-rö > -buru- moyö-rö- > moyuru- kö-rö- > kuru-
二次Ⅵ mi-ru 〃-bu moyu ku
語例 見ル 滅ブ 萌ユ 来(く)
活用名称 上一段 =    イ一段 上二段 =     イウ二段 下二段 =    エウ二段 カ行変格 =   イウオ三段

17−4 上の表に示したように 第二次の発生の原因は 用言原形・一次0 -ö(
たとえば mö )から 用言原形0’(たとえば mi 見)が さらに別に立てられたことにある。単純にそのような自由度によってだと考えられる。
17−5 その二次原形(0’ mi / höröb ï / moyä / kö・ki )が 第一次活用=強変化の場合と違って ただしやはり無条件に 二次Ⅲ概念法の位置に おさめられることになる。さらにこれらが そのまま二次Ⅰ不定法の位置にも 当てはめられていく。といったように考えられる。
17−6 それではなぜ 第二次の用言原形(0’ mi 見)が必要であったか。それは その用言としての概念相〔→Ⅲ概念法〕が 第一次原形(0 mö 守ル)概念相では まかなえないと思われたからである。
möru 守ルにも 《固定的に或る場所をじっと見る意》として mi 見の概念相はあるはずだが その意味(相認識)は 微妙に変化していったものと思われる。möru 守ルは ma(目)-möru 守(まも)ルや mi(見)-mamöru 見守ルというように 派生形を生まざるを得なかったとすれば 概念相の認識で 微妙な差異を持ったのであろう。
17−7 このように用言原形の第二次形成とともに その法活用にも 第一次とは別種の形式が 要請されたのであろうと考えられる。
17−8 けれども それでは 一次原形0 höröbö から 二次原形0’ höröbi( -i である) が 0 mö →0’ mi 見のように 現われてもよかったではないか。なぜそうではなく 二次原形0’ höröb ï < ・・・-bö-i という弱変化であるのか。
17−9 まず 通史的に見て 二次原形0’ höröbi( -i である。つまりそれとしての強変化の形態)も 考えられる。それは 現代語の滅ビルの活用として mi-ru 見ルと同じイ一段活用が存在するからである。現代語として。*来(き)ルは 未来語として。

höröbö moyö
0’ horobi moye kö / ki *ki
horo-bi moye ko ki
horo-bi-re moye-re ku-re ki-re
horo-bi moye ki ki
horo-bi-yo moye-yo köyö > koy ki-yo
horo-bi-ru- moye-ru- ku-ru- ki-ru-
horo-bi-ru moye-ru ku-ru ki-ru
語例 滅ビル 萌エル 来ル *来(き)ル
活用名称 イ一段活用 エ一段活用 イウオ三段活用 仮想・イ一段活用

17−10 逆に言いかえると イ一段活用の二次原形0’ horobi ではなく イウ二段の0’ höröb ï が存在したと仮説されるのは 一次原形0 höröbö が先行しており その勢力が残っていたからだと考えられる。
17−11 それは カ行変格活用の現代語 kuru 来ルの活用形態にも うかがえるように思われる。(Ⅰ ko / Ⅳ koy 来イ)。
しかも このとき 仮想のⅥ ki-ru 来(き)ル〔たとえば 二次Ⅰ ki-nai 来(き)ナイ〕となるとすれば これはもはや mi-ru 見ルと同じイ一段活用としての第二次組織となる。もっともこれは kiru 着ルと同じ形態となって都合が悪いのかも知れない。
17−12 問題は 二次Ⅰ=Ⅲ moyä 萌エの例であって なぜ二次原形に mi 見の -i(=一次Ⅲ)や höröbï 滅ビの -ï (Ⅲ’)のほかに 0’ -ä > -e ( moyä > moye )などという一次Ⅱ条件法 -ä の母音が 立てられたかである。
17−13 けれども Ⅱ条件法が 一次Ⅱ -ä < -a-i という成り立ちで 概念相の母音( -i )を含んでおり 体言の内的な格活用としては独立名格であったとすれば それが 二次原形(0’ moyä )に置かれたとしても 不思議ではない。というよりも 二次Ⅲ概念法に この moyä がほとんど無条件に立てられたとしても 不思議ではない。
そして同時に 一次原形0 moyö の持つ余勢のもとに 他の活用形態=すなわち二次Ⅱ条件法 moyö-rä / Ⅴ連体法 moyö-rö- の二形態を 形成したとしても 奇異ではない。その一次原形0 moyö の影響力がなくなれば 現代語・萌エルというエ一段活用なる第二次組織へと移行したというふうにさえ 推量される。
17−14 残る問題点は 二次Ⅰ不定法( mi 見 / höröbï / moyä / kö )が 二次原形=すなわち二次Ⅲ概念法( mi / höröbï・・・)と全く同じ形態であるのは 何故かである。
17−15 まず 二次Ⅲ概念法は 用言概念相の二次的な原形0’として立てられた形態( mi / höröbï / ・・・)がそのまま据えられることに 不都合はない。むしろそのために 二次原形0’は生成されたとすら考えられる。
17−16 なぜそれが そのまま二次Ⅰ不定法にも用いられていったか。それは――推測であるが―― 強変化(一次Ⅰ -a)に従いたくなかったと 単純に考えられる。一次原形0 -ö からの強変化=すなわち一次不定法(Ⅰ -a )とは別種の形式を与えたかったのであろうと。ゆえに 二次Ⅰ=二次Ⅲという法活用の形式。
17−17 もしこのようであるとすれば あとは かんたんに分析・解明されるはずである。
17−18 まず 二次Ⅵ存続法( mi-ru / höröbu / moyu / ku )は おおむねすべて じつは 強変化=第一次の形式に従っている。二次Ⅵ mi-ru 見ルが R‐派生活用での強変化だというのみである。
17−19 R-派生活用は 部分的に ほかにも現われている。二次Ⅱ条件法( mi-rä / höröbö-rä / moyö-rä / körä )/ 二次Ⅲ連体法( mi-rö- / höröbö-rö- / moyö-rö- / kö-rö- )の二つの法活用の場合である。しかもその上では 強変化=第一次におおむね従っている。
17−20 二次Ⅱ条件法が mi-rä > mire という狭いエ(é)で活用しているのは mirä:( mira-i)に重ねて -i を添えて mirä-i > mire となったのではないかと考えられる。moyä > moye 萌エも同じように考えられる。
17−21 もう一点は 二次Ⅳ命令法( miyö 見ヨ / höröbï-yö / moyä-yö / kö-yö 来ヨ)の活用である。これも 一種のR‐派生活用であって しかも第一次・強変化に倣った形式であると言ってよい。なぜなら 次の生成過程が想定されるから。
17−22 すなわち 一次Ⅳ命令法・たとえば
Ⅳ möri(Ⅲ)-a > möre 盛レ
のように=つまり 末尾母音としては
Ⅳ  -i(一次Ⅲ)-a(一次Ⅰ) > -e(一次Ⅳ)
といった命令法活用に倣ってのように
二次Ⅳ mi-a > mi-ö > mi-r-ö > miyö / mirö 見ヨ/ 見ロ
という生成が推測されるからである。そこでは -i に添加する母音 -a を 同じ無格母音の -ö に代えて そのあと この -i-ö を 合成母音とせずに 子音/ r(もしくは y) /を介在させたという恰好であるから。しかもこの介在子音/ y /は 二次Ⅳ mi-rö 見ロという形態も存在するように R-派生活用の異種だと言ってよいからである。見ラ‐ユ(自発法)〜見ラ‐ル / 有ラ‐ユル〜有ラ‐ルルにおける y 〜 r の交替。
17−23 Ⅳ命令法活用の形成にかんしては 次のような一解釈も成り立つかと思われる。

R‐派生活用 原形 二次(イ一段活用)
*mi-re < Ⅳ mi-ri-a > > mi-ri-ö > mi-ryö
・・・・・・> mi-rö見ロ / miyö見ヨ

介在子音によるのではなく もともとR‐派生活用の異種( a 〜 ö 母音交替)から成り立ったという見方である。
17−24 以上が 第二次・法活用の輪郭となる。






http://kutsulog.net/