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指定暴力団の「指定」ってなに?

【PJニュース 08月08日】− 指定暴力団五代目山口組(以下、山口組)に六代目組長が誕生したニュースはまだ記憶に新しいが、ヤクザや暴力団といっても「指定暴力団」は別格だ。暴力団を非合法組織と思う人は多いと思う。だが、暴力団対策法によって各都道府県公安委員会からの指定を受けた指定暴力団は、法人格こそ無いものの代表者や主たる事務所まで登録される法律に基づく組織である。世界でもマフィアのような犯罪組織を国が法律で規定し、堂々と代紋を掲げて事務所を構えられるのは日本ぐらいなものだ。

 さて、その指定プロセスがお役所的で興味深い。まず、都道府県警察の暴力団対策課が暴力団の活動実態や構成実態など指定のための資料の収集を行う。その資料は管区警察局警察庁に報告され、暴力団対策課長が警察本部長経由で公安委員会の決裁を経て、指定しようとする暴力団の代表者に対して意見聴取通知書を送達、さらに公安委員会の掲示板に公示される。そのうえで、公安委員会が代表者を意見聴聞する。暴力団は意見聴取にあたり許可を得れば、補佐人や参考人を同席させることができる。

 この意見聴取により指定要件の確認を行い、公安委員会の決裁を経て、晴れて「指定」となり、指定通知書が送達されるほか、なんと官報に指定暴力団の組織名称、主な事務所の所在地、代表する者などが掲載される。指定期間は公示から3年更新となる。現在、全国に指定暴力団は23団体あり、その下部組織も含まれるため、全国の暴力団員の9割以上が指定暴力団員となっている。

 兵庫県公安委員会は昨年6月15日に山口組を5回目の指定をしたが、暴力団が指定されるための要件は大きく3つある。
 
 1.暴力団がその暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成または事業の遂行のための資金かせぎを行いやすくしている団体であること。
 2.その暴力団の幹部または所属全暴力団員のうちに、麻薬犯罪や傷害罪など、暴力団特有の犯罪の前科を有するものが一定の割合以上居ること。
 3.その暴力団を代表する者またはその運営を支配する地位にある者の統制の下に階層的に構成されている団体であること。
 
 このように代表者により統制された犯罪組織を指定し、さらに禁止行為を定めることにより、下部組織であれ何かあれば、警察は中止命令を発出できるほか、被害者は組長を使用者として損害賠償請求ができることになっている。

 欧米では犯罪組織の結社そのものが組織犯罪防止法などによって違法となっているため、マフィアは地下組織化し、一般には実態が見えない。日本でも国際犯罪組織が暗躍しはじめているが、国内の暴力団に関しては、暴力団対策法によって規制されているため、国内最大の山口組を超える勢力の暴力団が突如現れたりすることは難しい。警察白書によれば、組織犯罪根絶を目指した欧米に対し、日本の警察は、暴力団を法律上の反社会的団体として明確に位置付けたうえで、代表者を明確にして警察のコントロール化に置く、という日本独自のユニークな取り締まりモデルとなっている。

 よって、指定暴力団の下部組織に何か不祥事が起これば、それは結果的に大親分の責任となり、組長によって統制されているはずの指定暴力団はあからさまな犯罪は犯せない。しかし、国内組織を規制するあまり、国際組織がボーダレスに勢力を拡大されてしまうと、せっかくの警察の戦略も裏目に出てしまうことになりかねない。そして、私たち一般市民も決して他人事にせず、情報武装し関心を持ち続けることが組織犯罪の抑制につながっていく。【了】