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哲学いろいろ

ナーナイ語

《山高み》のミは ナ-ナイ語における -mi の用法である。

ナーナイという言語が アムール川流域の地方で話されています。
 この言語に 
 ○ 同時性や付帯情況を示す論述条件詞(助詞と言いましょうか)の -mi
があります。これが 日本文で ‐ミにあたると思われます。

万葉集 4011番)
  山高ミ 川 雄大(とほしろ)し 
  野ヲ広ミ 草こそ繁し

  1. 《山高ミ》: ‐ミは 《〈山が高い〉という情況を示しますよ》という意味です。
  • これが 《高いので》という理由をあらわす条件の意味になるのは 文脈から出て来ます。 現代語では 《山が高くて 一日では頂上にまで登れない》といった連用形によって 理由などの条件を示します。
  • 《野ヲ広ミ》:《〈野を広いとして〉 草が繁っている》といった条件提示です。しかも それではなぜ《野ヲ》というようにヲ格にするか? これは 日本語に固有のはたらきによると思われます。
  • つまり 《野を行く・海を行く》というように―― 一般的な対格=目的格の用法から広がって―― 《客体と〔話し手とが〕時空間いっぱいに対峙する》という格の用法だと考えられます。


 おまけのお話があります。
 ○ ナ‐ナイ語には 否定(欠在)動詞の e があります。(これは 韓国語の オプタ(《無い》)を連想してもらえばよいのではないでしょうか)。
 ○ この e が 上の付帯条件相 -mi と組み合わさって 動詞の否定形をかたちづくる一環を成します。すなわち


   e + -mi  >  emi  >  em (《無い-でありつつ/ 無い-ながら》)


 となって この em を


   em + 動詞語幹 + 否定詞 ( =〜しない )


 の形で用います。かたちは二重否定ですが 意味はふつうの否定です。
つまり この形態は日本文でも見られるわけで 次の用法に採り入れられています。


   エ 言ハ‐ズ  ∽ ヨウ 言ワ‐ン
 あるいは
   エも 言はれぬうつくしさ


 に当たります。つまり
 ○  em は 日本文で
  (1)  em > e エ または
  (2)  em > eN (eng) > eu > yoo ヨウ
の二通りの用法に分かれているようです。


 たとえば 漢語の 
 ○ 葉=エウ > ヨウ 
という発音の変化の例を傍証として挙げられます。
(韓国語は この漢字語《葉》を ip として受け容れています。
《立 lip 》が 日本語の借用語では リップないしリッ と言っていたところ リツと読み慣わしたことになります。しかも lip の末尾の -p は -ゥ に変化し リゥ・リュウ といった発音でも受け入れたかたちになった。建立は ケンリツとは読まず コンリュウとしか読まないようです)。

 ですから仮説ですが 《山高み》のミは どうもナ-ナイ語から採りいれたものと考えられます。