caguirofie

哲学いろいろ

マシュマロの花

natural ( neutral )

    マシュマロの花


 ビルまで切りそうな
 鋭い鉄色の三日月が
 凍えそうに震えながら
 藍の深い空を泳ぐ晩


 君は洞窟の奥に眠る
 鍾乳石のように
 わずかな物音も立てず
 少しの雫をしたたらせ
 僕の世界の隅っこを
 それはひそかに漂った


 花粉ほどの君の気配を
 なぜか僕の五感は捉える


 世界はこんなに美しく
 喜びに満ちているのに

 どうして君は
 錆びついた悲しみを
 きつくきつく抱き続け
 蝉のように幾年も
 硬く冷たく閉ざすのか


 いつまで君は閉ざすのか
 墨のような暗闇に


 そこにいるのだろう?
 僕には君の鼓動が
 確かに聴こえる
 異国の楽器のように謎めいて
 それでもくっきりと


 僕は君に叫び続けよう
 太陽が西から昇ったって
 月が三つになったって
 大丈夫 かまうものか
 僕の声が
 いつか君にも届きますように


 君は花
 真冬の透き通る
 どこまでも突き抜ける空
 たおやかに咲き誇る
 マシュマロの花


 僕は君の
 空気になり水になり光になろう
 明日もあさっても来週も
 10年後も50年後も


 来世紀もずっと


 さあ咲きなさい
 ひらきなさい
 ゆっくりでいいから

bragelone

 マシュマロの花。



 これは 転調でもないのですね。

 どんでん返しというのでもなく もともと《鍾乳石のように雫を垂らした》そのときから 花であったのですね。いまにも咲こうという花だったのですね。

 すでにじゅうぶん《たをやかに咲き誇った》ことさえある大いなるマシュマロの花だったのですね。もう一度咲きなさい。何度でも咲きなさい。


 ヘンな茶々を入れるなら 冬はやっぱし寒いですね。その空も 透き通っていても 寒そう。
 寒がりなのかな わたしは。まぁ じっさいそうですが どうも冬は寒そうです。

 かと言って春や夏にしてしまうと それはたぶん安易に明るく描こうとしているように見えてしまう。かも知れない。でしょうか。


 ちからづよさに中に あったかさが わたしには欲しかった。自転車で出かけるとき マフラーはもちろん頭を覆う毛糸の帽子がないと寒い。耳当てを百均で見つけましたけど。


 闇を切り裂く花粉のあかるさを感じましたが 冬は寒い感じでした。というのが 正直なところです。これは 個人的なわたしの弱みかな。