caguirofie

哲学いろいろ

あの戦争に

半藤:しかし 前線部隊のひとりひとりの兵隊さんがどんなに勇戦力闘しても 戦術の失敗は補えない。そして 戦術がいかにうまく運用されても 戦略の大失敗は補えない。上層にいけばいくほど 何でこんな国家戦略で戦争しているんだ ということになる。


保阪:前線の兵士だった人に 《なんであんなに懸命に戦ったんですか》と質問すると 主に学徒兵のインテリ層ですが こう答える人たちがいるんです。


 日本は一度 こういう無理な戦争をくぐり抜けなければ仕方ない運命なんだ。それを私たちの世代が引き受けているんだと理解していました。


と次の世代にこんな戦争はしてほしくないから 自分たちがやるしかない と思ったというんですね。
僕は ちょっと意地悪かもしれませんが 《それは本当に戦場で思ったことですか。戦後に考えられたのではないですか》と尋ねます。するとたいてい


 戦場で 仲間どうしでこういう話をしましたよ。


と言いますね。極限状況になると案外そういう話もするらしい。
戸高:そうですか。戦場で 吉田満さんの『戦艦大和ノ最期』の中でも 白淵大尉の言葉として


  敗レテ目覚メル ソレ以外ニドウシテ日本ガ救ワレルカ(中略) 俺タチハソノ先導ニナルノダ・・・


と書かれていますが 同じですね。
半藤一利 保阪正康 中西輝政 戸高一成 福田和也 加藤陽子:あの戦争になぜ負けたのか 2006 pp.184−185)