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哲学いろいろ

ハ格とガ格

雪国

 ▼(あ) 国境の長いトンネルを抜けると、〔* そこ‐ハ〕 雪国「が」広がっていた。
 ☆ というふうに 《 A‐ハ B‐ガ C‐ナリ / C‐スル。》の構文として捉えたのですが いまもし 雪国をガ格ではなく ハ格で承けていたら どうなるか?
 ▼〔(あ)の変種〕 国境の長いトンネルを抜けると、雪国‐ハ 広がっていた。
 ☆ まづこれは ガ格で承ける関係主題が ハ格で承ける中心主題と同じであることを意味します。
 ▼(同上) 雪国‐ハ 〔それ(=雪国)‐ガ〕 広がっていた。
 ☆ 関係第二主題として 第一中心主題そのものを引き出したかたちです。

 では《(あ)の変種》は どういう意味になるのか?
 ハ格は あくまで中心主題であり 話し手(作者ないし登場人物)がまづ最初にこれを話題にしますよと言って提示するものです。つまり話し手の頭の中には そのハ格の主題がいちばんの話題になっておりますと言っています。
 つまり だとしたら いま列車に乗ってその土地へ近づいているのでしょうか そのときにすでにその目的の地は 雪国だという観念が起きていた。こういうことであり そのすでに持たれている観念をいま話題にしたいし しようとして言い出している。それが《(あ)の変種》の文例になります。
 読み手に対してその前にその観念のことを伝えているかいないか それは知りませんが たとえ伝えていなかったとしても 自分(主人公)の思いの中にはすでに期待や何やかやをともなって話題になっていると言いたい。このことを意味するし そういう表わし方も 自由であるようです。つまりそれは ハ格が そういう内面における思いがすでに先行していたということを あとづけによっても 示します。

 ハ格:第一中心主題を示す
  ⇒その主題がすでに相手とのあいだでも話題になっていたことを示すか
  またはなっていなかったとしても話題に成っていたと見なして述べるか
  たちになる。

 ガ格:関係第二主題を示す
  ⇒第一中心主題にかかわる何かがそこから引き出されて来るというので
  あるから その引き出されて来るときには 少なくとも聞き手には そ
  れが引き出されることが分からない。知らなかった。
   聞き手には このガ格がみちびく第二主題を聞くと或る種のおどろき
  がある。文例(あ)では 《雪国》という主題が それまでに話題にな
  っていなかったところへ出されて そういう新鮮さが醸し出される。
  (すでに一度でも話題になっていたとしても そういう表わし方をねら
  っている)。

 ☆ 一般に ハ格の主題は 既知のもので ガ格のそれは 未知のものだという説明がなされます。それは 第一とそこから派生する第二 言いかえると中心となるものとそれに関係するものといったつながりがあるからだと考えます。実際のところ 既知か未知かがそうでなくても 表現上 既知扱いと未知扱いとそれぞれなる。こういう仕組みになっているはずです 日本語のこの構文は。