地中海の晩鐘(#3)
3
琥珀の道のかなたから
馬にまたがる
北方の大きな身体に鋭い眼の
黄赤色の頭髪の
大胆(フランク)で長い髯(ランゴバルド)の
神々を祀る民らの降りてくる
九月
赤いエトナを取り囲む
明晰のシラクーサと
自由のパノルモスと
豊かな島を取り巻く
尊厳者(アウグストゥス)らの海はすでに喪く
ゴートの地からカスピの海を廻って
遠く降りて来た者たちは
メッシナを渡って島に押し寄せ
ヴァンダルの地からイベリアを巡って
フェニキアの古都にとどまった者たちは
故人の船を出して島を突き荒らせば
始原の神々は
ナザレの人の福音の前に影をひそめ
ギリシャ正教徒
カエサルの東の勇は
遠くサラミスにクセルクセスを破り
自由と明晰を守ったように
千年の壁でゲルマンのぶどう酒を醸成する
醗酵する緑の海の変貌を見よ
東の王ユスチアヌスが
名将ナルセス ベルサリウスを遣り
島で交差する
緑の道を復原するかに見えるころ
セムの裔の中
静かな半島の白い砂の中
ヘブライの神を超えて
厳しく光る月を見る預言者は生まれ
容れられず
故郷を後にすれば
幾万のらくだは力強く
遠く征き近く征き
コンスタンチノポリスを襲い
ジブラルタルを渡る
ああ 南の風(シロッコ)が大陸の白い風が
緑の島を掻きくすぐり
音もなく海のエトナを揺らめかせ
赤いさざ波が島をめぐる
島は
ヴァチカンの杖を抑える
ビザンチウムの笏を迎え
蜂起
緑の十字路の赤い一本の糸は
メッカの砂嵐を抑えて
輝く夏の《われらの海
マーレ・ノストゥルム》を追う
東のコンスタンス二世を迎え
――以後 要路に君臨し夢を追う者を思え――
捕らえて
赤い山に繋ぐ
風が流れ 赤い糸が揺れる
島に
新しい灌漑の船が着く
らくだを駆る
日の昇る地の
ムハンマドを継ぎ詠む
砂漠の民
は
南の大陸に褐色の旗をなびかせ
すでにイベリアに剣を突き刺し
七二〇 七二七 七二八 七三〇
七三二 七五二 七五三
わが島に
《コーランか 剣か 貢納か》と迫る
そのとき考えられることは (1) 唯一の被爆国であるという地位を 核武装によって 捨ててしまうのか。(2) おそらく時代は変わって来ている。中国やロシアは むしろ十九世紀の国際関係の次元にまで戻ってしまっている。おつきあいする必要はないだろう。平和的な手段によって衝突や紛争や懸案の問題を解決するという方針を世界の国々ととも