caguirofie

哲学いろいろ

新所帯 ( Jeune Ménage )

ああ部屋は濃き藍色の空に曝され
箱手箱 部屋一杯の散らかりよう
塀沿いに馬の鈴草茂り放題
幽霊の歯茎震わせギイイギギガア


これはまさしく精霊の仕業
この濫費 この乱雑
阿弗利加の仙女が部屋の隅々に
桑の実もたらし鉛の網張る


数人のふくれ面した代母たち
光の襞に身を隠し食堂に入って
そこに坐る 家を空けるは新婚所帯
別に大したわけもなくそして何もなされない


新郎は風に吹かれてこの新居
留守中はまったくもって放ったらかし
悪戯好きの水の精さえ
寝室侵しあたりをうろうろ


夜ともなればもう大丈夫 蜜月は
精霊のほほえみ摘み取って空には
千本の銅(あかがね)の帯張る
あとはと言えばいたづら者のねずみだけ


――蒼白い鬼火がもしも晩祷の後
銃弾の発射のごとく現われなければ
――おおベトレヘムの白く聖なる妖怪どもよ
むしろ窓辺の青をこそ魅惑したまえ


(A.Rimbaud: Jeune Ménage )