caguirofie

哲学いろいろ

第一章 あらまし(a)

全体のもくじ

第一章 あらまし(§1〜§5):本日
第二章 作業仮説(§6〜§10):2005-08-31 - caguirofie050831
第三章 文の生成(§11〜§12):2005-09-05 - caguirofie050905
第四章 語の生成(§13〜§14)):2005-09-06 - caguirofie050906
第五章 母音組織の生成(§15):2005-09-09 - caguirofie050909
第六章 用言の法活用組織の生成(§16〜§22):2005-09-10 - caguirofie050910
第七章 子音組織の生成(§23〜§25):2005-09-14 - caguirofie050914
第八章 生成形式としての基本文型:《AハBガC》の一般性――かんたんな言語類型論――(§26〜§30):2005-09-17 - caguirofie050917
第九章 つづき――能格構文をめぐって――(§31〜§32):2005-09-19 - caguirofie050919
第十章 余論――言語表現をめぐる非人称の問題――(§33〜§36):2005-09-21 - caguirofie050921
参考文献(§37):2005-09-22 - caguirofie050922

  • なお 残念ながら ローマ数字が表わされていません。技術的に障害があるのかもわかりません。〓(大文字)??(小文字)のように出てしまっています。

第一章 あらまし

第一章 あらましの目次
§1 文
§2 文の成分

  • §§2−16 用語のまとめ――以上:本日

§3 文の要素:語――:2005-08-09 - caguirofie050809
§4 言語表現の素材:音素――:2005-08-10 - caguirofie050810
§5 文の生成と構文――:2005-08-11 - caguirofie050811

§1  あらまし――言語表現にかんして 事実関係としての基礎的な事項を 日本語に即して 明らかにしたい。
1−1 文表現を一つの前提として話を進めよう。
1−2 とは 発話者の判断内容(広義)について 最小限にまとまったかたちで表現されたことばである。

  • 〔例〕 私ハ口下手デアル。

1−3 文〔§5〕およびその成分〔§2〕・要素〔§3〕・素材〔§4〕にかんして 基礎的な文法事項を整理する。
1−4 ここで基礎的なというのは 文ないしその構成要因にかんする生成をめぐる問題のことである。
§2  文の構成要因として 成分は 基本成分附属成分とから成る。
2−1 基本成分は 主題成分(T)と論述成分(P)とから成る。 

主題成分(T1) 主題成分(T2) 論述成分(P)
〔分析1〕 私ハ 口下手デアル。
〔分析2〕 私ハ 話ガ(口ガ) 下手デアル。

      
2−2 かんたんに言って 問い(主題)と答え(論述)とである。 

  • 私ハ     = ワタシという主題(T1)の提示。

       = 私ニツイテ問ウナラバ

  • 話ガ    = ワタシにかかわってハナシ(またはクチ)という関係主題(T2)の提示

       = 話ノコトダガ ソノ話ガ

  • 下手デアル = 〔答え(P)として言えば〕拙イ。

2−3 一般に主題にあてられる語を体言といい 論述を形成する語(あるいは論述を締めくくる語)を用言という。ワタシ・ハナシ・クチそしてヘタは 大きく言って 体言であり 下手ダ・アルは 用言である。
2−4 文において 文意としての判断内容は 論述用言に収斂していく。また その用言の活用形態によって 表示される。
2−5 発話者(判断者)は とくにその論述用言への収斂と用言の活用とをもって 文を統括する。

発話者→ 主題の提示→その統括→ →論述〔主題〕の提示→その判断形態(法活用)
分析1 (我は以下ノヨウニ言ウ) 私ハ=〔主題格〕 口下手デアル。=〔論述格〕
(〃)   かつ=〔経験主格(私ガ)〕   かつ=〔述格・存続法(終止形)・断定法〕
分析2 (我カク考ウ) 私ハ=〔第一中心主題格〕〔−(《私にかかわるところの》)〕 話ガ=〔関係第二主題格〕 下手デアル。=〔論述格〕
(〃) (話ガ)=かつ〔現象主格〕 (下手デアル)=かつ〔述格・存続法(終止形)・断定法〕
  • ちなみに ここで 主格述格との連絡関係は 英語でいう主語と述語(S+V または S+V+C〔 I am a halting speaker.〕 )の構文である。主格は ここで 経験主体を現わす経験主格(私ガ)と 現象そのものを 主格に見立てる現象主格(話ガ)とが出てきている。
  • しかるに 主題格の提示というのは この英語構文に見られる主+述の格活用による統括関係とは別の発話層を形成している。
  • 言いかえると 統括関係が 文の全体として 二重の層において発揮されている。論理的な意味内容を連絡させている主格←→述格の格関係の層 および 主題の提示と論述での対応といった問答の対応関係を示す主題格→論述格の格関係の層。ちなみに論述も 論述主題である。(詳細は 追って。)

2−6 文の成立にとって 主題と論述との二つの基本成分が 必要かつ十分な条件である。

主題 論述
〔文例〕 下手。

または  

主題=T1・・・T2・・・T3・・・T4=論述P
〔文例〕      我    昔   口   下手。

このように ある種の答えに行き当たるまで 主題(T1〜n)を列ねることで 文が生成し 成立していくと考えられる。論述(P)も 初めは 論述主題(Tn)である。
2−7 基本成分以外の要因を附属成分という。
2−8 附属成分は 一般に条件詞とよべる。
2−9 たとえば基本成分の中の主題体言や論述用言を条件づけ限定するのが 附属成分である。形式としては それぞれを修飾するという。
2−10 主題体言を条件づけるものを 主題条件〔または主題条件詞〕(属格語句・連体語句) そして論述用言を修飾するものを 論述条件〔または論述条件詞〕(連用語句・副詞)とそれぞれ名づける。

中心主題(ハ格) 関係主題(ガ格) 論述主題(用言の法判断)
口下手ノ‐私‐ハ 手紙ヲ書ク‐ノ‐ガ トテモ‐好キダ。
主題条件 ‐体言‐活用格  主題条件‐体言‐活用格 論述条件‐論述用言

2−11 ヨク成ルという場合 ヨクが 成ルという論述成分を修飾して 論述条件としての附属成分をなす。成ルホドという場合 成ルが ホドという体言を修飾して 主題条件となる。
2−12 一つの文そのものを条件づけ別の文に連絡する附属成分は 文条件詞(接続詞)である。いわゆる逆接の接続詞のガは 次のように 関係主題として引き出された事柄(T2)に対する応答を導いている。

中心主題(T1) 関係主題(T2) 論述主題(P)
私ハ 物書キダガ 演説モ上手イヨ。
私ハ‐私ガ 物書キ ‐ダ‐ガ 演説‐モ‐上手イヨ。
T(??)1‐T(??)2 T(??)3‐P(??)‐文条件詞 T(??)4‐主題条件詞‐P(??)
文(??) =文(??)‐文条件詞 文(??)
ハ〔話題格〕‐ガ〔関係主題格かつ経験主格〕 ダ〔論述格=主観判断を定義法として表わす活用〕 《文(??)の四つ目の関係主題》が《文(??)の一つ目の関係主題》となる。
=T(??)1‐○ ○‐○‐○ T(??)2‐ガ‐P(??)
私‐ハ・・・ ・・・ 演説‐ガ‐上手イヨ。

  • なお 演説モ=T(??)2は やはり ガ格に主題条件詞モが付いている。
演説モ 上手イ
意味: (文章とともに)演説ガ 上手イ
論述収斂層: ガ〔現象主格〕 〔述格〕

   

  • このモ格は もともと主題である体言(または みなし体言)に添えられて 確認もしくは推量の認識相を持たせるものと考えられる。主題格であるハ格にもガ格にも付き これらハやガを省略させる。
  • 中心主題にせよいくつかの関係主題にせよ そのような既に発話された別の主題とのかかわりにおいて 自らの付く主題のことを確認させようとする。したがって 共存・並列の相認識を帯びさせるのが 実際であるのだろう。
  • ヨ=呼びかけ法・実定法について ここでは省略。(補充用言である。) 

2−13 ナルホドという語句は 用言の成ルが主題条件に変化し(連体形に活用し) ホドという体言と複合して 一つの語を形成するに到っている。これは 間投詞であり 超文条件詞文外条件詞)という一つの附属成分である。
2−14 超文条件詞も 文条件詞(接続詞)と同じように一文全体を条件づけるが 文と文とをつなぐわけではない。あたかも文の外にあって 自らがあたかも一つの文の如くでありつつ 別の一文を条件づけている。
2−15 ナルホド ソウダ。または オソラク ソウダ。という文例で ナルホドやオソラクはそれぞれ 《ソウダ。》という一文に対して あたかもその文を超えて かかわっていく。
ナルホドやオソラク自体で それぞれ論述を構成しうるかの状態であり それぞれがすでに一つの文に近い。
従って初めの二つの文例は それぞれ二つの文から成り立っているかのごとくであり 互い(たとえばナルホドとソウダ)の間にはあたかも断層が出来ている。その断層を含んだ全体を 発話者が統括している。

  • 文表現の内容は すべて発話者の主観であるが 超文条件詞は特に 発話者個人の感覚に近い主観を表出している。間投詞として アッ ソウダ。のアッが例として分かりやすい。 

2−16 用語のまとめ。

  1. 文の表現 
    • 発話者(主観・判断)の存在
    • 発話者による文の統括
    • 論述・用言へ収斂してゆく。
    • 用言の活用によって主観の判断内容を示す。
  2. 統括作用は 二層にておこなわれる。
    • 一つ目の主題提示層は あたかも主題の羅列のように成分がいくつか発話されていく層である。
      • ここでは 種々の主題の性格内容が 互いとの関係において 決められていく。ハ格(中心主題格)かガ格(それの関係主題を提示する格)か あるいはヲ格かニ格か(一般に賓格)などなど。
    • もう一つの論述収斂層は それら成分が 論述の述格の決定とともに(ということは 問いに対する答えの表明が完了するとともに) たとえばその述格に対する経験主格であるとか 定義主格であるとかのような 主+述(いわゆるS+V)の論理的な格関係のもとに置かれていく層である。
      • ガ格が一般に主格を――上の関係主題格とともに――兼ねる。ハ格も――中心主題格であるほかに――主格となりうる。 
  3. 基本成分
    • 主題 T(体言=名詞やあるいは動詞の体言用法〔連用形・連体形活用〕など)
      • 体言も活用し それを格活用とよぶ。
    • 論述 P(用言=動詞・助動詞・形容詞など)
      • 用言の活用をのちに 法活用という。
      • 予めながら 次の如く取り決めたい。
        • 動態用言=動詞
        • 状態用言=形容詞・形容動詞
        • 補充用言=助動詞       
  4. 附属成分
    • 主題条件〔詞〕(体言に連絡する語句=体言の属格活用形態や用言の連体形〔連体法活用〕など)
    • 論述条件〔詞〕(用言を修飾し用言に連絡する語句)
      • 体言の対格〔ヲ格〕活用形態*1
      • 与格〔ニ格〕活用形態*2
      • 用言〔ヨイ〕の連用形からの転用形態〔ヨク〕
      • また副詞〔トテモ〕など
    • 文条件詞(接続詞)〔たとえばガ=逆接として文を条件づける。←関係第二主題という格活用から転用。〕
    • 超文(=文外)条件詞(間投詞〔オソラク・ナルホド・アッなど〕)

(つづく)

*1:厳密には ここに入れるのは 間違い。ヲ格主題は基本成分のうち主題の分化したものである。

*2:上の註におなじ。