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哲学いろいろ

地中海の晩鐘(#0)

  ・・・地中海文化がひとつの現実であったときは 
  ヨーロッパもアフリカも存在してはいなかった。
       (ホセ・オルテガ




赤いエトナが海に落ちる


緑が山に踊り出し
雨が至点を通る頃


オリュムポスの黄昏に
太陽の群れが傾いて
二つの月がくっきりと現われる頃


赤いエトナが海を染めて
沈黙の波があわただしく走り
熱い潮が島を巡り
晩鐘がおもむろに水面を打つ時


海に真っ赤な波紋が広がる


   *


星雲をめぐる
金河 銀河の太陽が沈み
新しい太陽と一つの月が生まれ
紫の争いを繰り広げ対立し
太陽はまた二つに分裂し
そして
もう一つの月が後を追って迫り
沈黙の神々をはさんで
二つの月が向かいあって昇るとき
太陽は一つが傾き
一つは古い月と宿命の戦いを受け継ぐ

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地中海の晩鐘(#1)

ヘファイストスの混沌に漿液が鋳られて
母なる海が胎児を浮かべ
褐色の大陸を押し開けて
青い輝きを発すれば


白い島々に
錨が降ろされ
斑鳩(いかる)の群れが 帰ってくる


ブリアレオスの葦が母をさまよい
潮流の深みに光る糸を垂れれば
静穏の鐘は明晰を生み
燃える酒精は熱情を 映す


海を行く精神は
キュクロップスの混淆を重ね
月光に豊饒を祝い
太陽の中に梟の眼を 象る


海の民の粘土板に刻まれた 黙示録

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