caguirofie

哲学いろいろ

#4

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漱石英詩註(その三)

人麻呂の七夕歌集の全体から言って この第2029番のうた――未来形が現在形となろうとしているとき――よりあとの歌は 四首残すのみである。
全体の最後の2033番の歌が うた自体が難解(未だに定訓がない)であり かつ すでに成立していた人麻呂歌集に 後世の時点でこの一首は混入したとする見解もその余地を残すほどなので 残った三首を 次に見てみよう。

秋去者 川霧 天川 河向居而 恋夜多
秋されば川そ霧(き)らへる天の河 川に向き居て恋ふる夜の多き
(2030)
吉哉 雖不直 奴延鳥 浦嘆居 告子鴨
よしゑやし 直(ただ)ならずとも ぬえ鳥のうら嘆(な)け居りと告げむ子もがも
(2031)
一年迩 七夕耳 相人之 恋毛不過者 夜深徃久毛〔または 不尽者 佐宵曽明尓来〕
一年(ひととせ)に七夕(なぬかよ)のみ逢ふ人の恋も過ぎねば夜は更けゆくも〔または 尽きねばさ夜そあけにける〕
(2032)

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