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哲学いろいろ

文体−第五章 魯迅

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2004-12-21 - caguirofie041221よりのつづきです。)

第五章 魯迅と《阿Q》

 このとき突然 私の脳裡に不思議な画面がくりひろげられた――紺碧の空に金色の丸い月がかかっている。その下は海辺の砂地で 見わたすかぎり緑の西瓜がうわっている。その真ん中に十一・二歳の少年が 銀の首輪をつるし 鉄の刺す叉を手にして立っている。そして一匹の《チャー》を目がけて ヤッとばかり突く。すると《チャー》は ひらりと身をかわして あべこべにかれの股をくぐって逃げてしまう。
 この少年が潤土である。
魯迅故郷 (中国の児童文学 第 1集11) 竹内好訳《吶喊》所収)

ゲーテの《ファウスト》の助手であったヴァーグナーが そのときには大学者となっていて 造りあげたホムンクルス(こびと) このホムンクルスが フラスコの中から しゃべったことば――すなわち《自然のものには宇宙も狭く / 人工のものは くぎられた空間を望みます》―― この中の《自然》に この魯迅の《一少年 閏土》を比喩として あてはめていた。
だが かの《阿Q》も この《自然》の仲間のひとりである。閏土は素朴にはたらき生きており 阿Qはもはや どろぼうの常習犯でもあるのだが。《阿Q正伝》は 小説《故郷》と同じ年に・そしてその後に 発表されている。

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