第一章 あらまし(b)
全体のもくじ→序説・にほんご - caguirofie050805
第一章 あらまし
第一章の目次
§1 文
§2 文の成分
- 2−16 用語のまとめ――以上:序説・にほんご - caguirofie050805
§3 文の要素:語――:本日
§4 言語表現の素材:音素――:2005-08-10 - caguirofie050810
§5 文の生成と構文――:2005-08-11 - caguirofie050811
§3 文の要素とは 体言 / 用言 / 条件詞などの語のことである。
3−1 語は それぞれ相認識(意味内容)を持つ。
3−2 成分についても 主題 / 論述 / 附属成分(条件詞)としてのそれぞれ相認識がある。
3−3 ナルホドという語は 用言(成ル)+体言(ホド)という成り立ちとしての相を変えて 超文条件詞に定着した。このような相の変化を 相活用とよぶことにする。
3−4 ヨク成ルのヨクも ヨシという用言が変化してこのヨクを派生し これがさらに論述条件詞(副詞)になったとするなら そこに一つの相活用がある。
3−5 用言は 次の三種に区分される。
- 相認識として動態相を持つ動態用言(動詞)
- 状態相を持つ状態用言(形容詞・形容動詞)
- 補充用言(助動詞)→次項
3−6 補充用言は 用言(または体言)と共に それに附属して 論述を形成する。論述ないし判断内容を 用言の表わす相のほかに 必要に応じて 補充するものである。
3−7 成ル‐カ? / 成ル‐ナ! というと 成ル(=《新しい別のモノ・コト・サマに変わる》の相)という用言に さらに疑問の相(‐カ?) / 禁止の相(‐ナ!)をそれぞれ補充している。いわゆる終助詞のうち このようなものは 補充用言とする。
3−8 用言は 論述にあてがわれて 形態を変化させる。つまり 活用する。
3−9 論述用言の活用は 判断のありか(つまり 発話者による文統括の収斂するところ)を示すだけではなく 判断の形式をも示す。この判断形式を 自らの形態を変化させてそれぞれ示す。
3−10 判断形式を法と呼ぶとすれば 用言の活用は 法活用である。
3−11 成ル‐カ? / 成ル‐ナ! における補充用言(‐カ? / ‐ナ!)は それぞれ〔疑問相→〕疑問法 / 〔禁止相→〕禁止法に活用しているという。ただし これら(‐カ / ‐ナ)じたいは それぞれただ一つの法活用形態しかもっていない。
3−12 成ル‐カ? の成ルは 連体法(連体形)として そして成ル‐ナ!の成ルは 存続法(終止形)としてそれぞれの活用が捉えられる。(後述)
3−13 体言も活用する。
3−14 体言が文中で主題に用いられると 主題の性格内容(その相)が 位置づけられていく。この性格内容を持って各主題が互いに相(意味)関係を形成するとき これを 格活用とよぶ。
3−15 それぞれ主題体言の相が 文中での網の目ないし格子の結節点に落ち入ったわけである。
3−16 格活用は まず論述の用言が 一義的に 述格(論述格)という格活用を持つことから始まる。
3−17 従って実際には この用言述格にもとづいて 各主題(その体言)が どのような相関係のもとにあるかを示すのが 格活用である。
- 私+ハ / 口+ガ / 下手ダにおいて 下手ダという用言述格が決まると それにもとづいて 私も口もそれぞれの体言が 互いの相関係を明らかにしていく。
- またその相関係を示す標識として ハやガが用いられる。ハ格やガ格に活用したという。
- ハ格やガ格等々 主題体言の格活用は 文において 述格へ収斂していく。
3−18 述格用言の動態相(動作相)に対して その動作主であるという相を表わすのが 主格活用であり その対象であるという相を表わすのが 賓格活用(対格 / 与格)である。そのように決められていく。
- 動態相が 動作でない場合 細かくは 経験相に対して経験主格 現象相に対して現象主格 定義相に対して定義主格などがある。
- 私ハオ喋リガ好キダ。について 好キダという述格に対して 私ハは 主格(経験主格でも現象主格でもあるいは定義主格でもよい)に決まり オ喋リガは 賓格(好キダの客体の相)ということになる。
3−19 詳しい例示をあとに延ばす(§3−24)なら 文における格活用は このように 主‐賓‐述の格関係(いわゆる S‐V‐O構文)が 基軸となる。
3−20 ただしそれとは別に・そしてむしろそれ以前に 文においてはその基本成分そのものとしての格がある。
3−21 文表現において 主題(T) / 論述(P)にかんして たとえば日本文で T1ハ T2ガ T3(=P)-ナリ / -スル と表わしうるとき 第一主題T1や第二主題T2は まず初めに一般的に 主題格として活用していると言わなければならない。
- 文表現にあって まずは主題として提示されたというその相にもとづいて名づける。
- 論述(P)を第三主題T3というようにも表わしたのは これをもともと 論述主題(T3=P)として生成したという仮説による。
- 論述主題は 主-賓-述の格関係においては 述格をになうことになるので 主題提示という相認識を変えて 論述判断という相を帯びる。あたかも扇の要の部分にあたることになる。
3−22 主題格活用というのは 文意の確定に直接かかわる主(T1ガ)‐賓(T2ヲ)‐述(T3スル)の格関係の以前に 第一主題という相や第二主題の相あるいは論述主題の相が現われるとき これらに基づいてそれぞれの主題格活用を捉えてみるという場合のことである。
3−23 文における格関係は 従って 二つの層から成る。
〓 主題格の提示層: T1ハT2ガT3(=P)
- 第一主題格(ハ) / 第二主題格(ガ) / 第三主題格(ヲ・ニ・或いはノ・・・・)/ 論述主題格
〓 論述判断に収斂していく層:主格‐賓格‐述格
- 主格語(主語=S)・賓格語(目的語=O)・述格語(述語=V)
〓では T1 / T2 / そしてT3(=P)をそれぞれ単純に(または絶対的に)主題として提示しますと言っているときの格活用である。
〓では すでに 主‐賓‐述(あるいは S-V-O)といった論述(論理)的な意味をになう格関係が捉えられていく。
3−24 たとえば次のように分析される。
文(基本成分) | 主題成分T1 | 主題成分T2 | 論述成分T3=P |
---|---|---|---|
文例: | 言葉は | 人が | 語る。 |
主題提示層: | 中心主題格 | 関係主題格 | 論述主題格〔(法活用)〕 |
・ | (言葉二ツイテイエバ) | (ソレ二関係シテ人ガ) | 〔存続法=恒常法(語ルノガ一般ダ〕 |
・ | ‖ | ‖ | x |
論述収斂層: | 対格(O)(言葉ヲ) | 主格(S)(人ガ) | 述格(V)(語ル) |
- ハ格主題とガ格主題という二つの主題提示を見るとき そのような主題提示層のほかに もう一層の意味関係が 生じているのを見る。つまり格関係として ハ格の場合は 中心主題格と対格との二層 そして ガ格は 関係主題格と主格との二層 というふうに それぞれ 二重(二層)の格関係をになっている。
- 論述成分は 文外の話者の統括を直接受けてのように 用言の述格と法活用とがいわば掛け合わさっている。そこに一定の判断(つまり法)と意思表示が 込められている。
- ちなみに欧文では一般に 論述主題格の法活用の部分も 論理的な格関係としての述格のほうに 一体となっているとして捉えられ 結局 主題提示層は あって無きが如くに扱われていく。つまり 必ずしも 二層から成るとは扱われない。
3−25 〔第一主題の相→〕中心主題格(言葉ハ)が 論述収斂層の意味関係で 対格(言葉ヲ)を兼ねるようになっていることが 二つの層の存在を表わしている。むろん ハ格は つねに ヲ格を兼ねるということではない。
文 | T1 | T2 | T3=P |
---|---|---|---|
文例: | 象は | 鼻が | 長い。 |
主題提示層 | 中心主題格 | 関係主題格 | 論述格〔存続法〕 |
・ | (象トイエバ) | (その鼻が) | (長い〔のが一般だ〕。) |
論述収斂層 | 属格(象ノ)/位格(象ニオイテ) | 経験主格(鼻ガ) | 述格(長イ。) |
3−26 〔第二主題の相→〕関係主題格(人ガ)が つねに 主格であるとは限らない。
文 | T1 | T2 | T3=P |
---|---|---|---|
文例 | 私は | 口が | 下手だ。 |
論述収斂層1 | 位格(私ニオイテ) | 現象主格(語リ口ガ) | 述格(拙イ。) |
〃2 | 経験主格(私ガ) | 位格(語リ口ニオイテ) | 述格(拙イ。) |
3−27〔第三主題の相→〕論述主題格が 主題格であるというのは さすがに名目上のことであろう。最終に提示される主題として論述をになうことになるということは 文外の話者による統括がやはり最終的に集中されてのように その論述部に意思表示が形作られるのであるから 数ある主題の一つを提示するというわけのものではなくなる。
3−28 その論述の用言の語ルは その法判断が 平叙・肯定・存続の相を持って 存続法活用(終止形)にあるという。
- ちなみに 用言は論述部に用いられて 一般に終止の位置にあるのだから 終止形というのは いかにも つたない用語であるだろう。
3−29 そしてこの法活用が 論述収斂層での述格と掛け合わさっている。論述(T3=P)の用言は 法活用x述格という構成によって相認識(了解)される。いまの例では 述格(語ル)の動態相が 禁止の相(語ル‐ナ)や否定の相(語ラ‐ナイ)ではなく 存続法(平叙・肯定の相)に置かれて 恒常のことがらであるといった話者の判断内容を表示する。
3−30 言いかえると 発話者の判断内容・要するに文意は この論述用言の述格x法活用に収斂していく。
3−31 逆に言うと 中心と関係との二つの主題格(言葉ハ / 人ガ)を 対格(言葉ヲ)と主格(人ガ)へ相活用させ確定させるのは 用言述格(語ル)のしわざである。(文外の話者の統括は もはや当然とすればそうなる。)これは 論理上の意味関係としての主‐賓‐述の格活用を決定することとして これら格活用主題に対する述格の支配といえる。
3−32 そこで 主題格として位置づけられるべき初めの第一・第二などの主題は 一般にその体言が いまだ互いの論理的な格関係を決められる以前にあるとき それぞれが 絶対提示されたという。その格が未決定の状態にあることを 絶対格と名づける。
- 先の例文で 言葉あるいは 象という語が言い出されたとき まだ何も意味関係が決まっていない状態にあれば それを称して 絶対格に提示されたと言う。おそらく あるいは なるほどという語は ほとんど常に この絶対格において 文の間に投げ出される詞である。
3−33 文表現の全体にかんしてそのすべては 文外の発話者が統括している。話者の格は 文体格とも言えるし 結局は人格である。
- 日本語では この話者による文の統括をあいまいにする表現が美徳を表わすと言われる場合がある。
- 婉曲法としての活用は いわば 文意を絶対格において提示するようでもある。
- しばしば この場合 最後まで絶対格のままにしておく事例も見られる。これは 相手に対して 自分の表現すべき文であるのに その文の格活用や法活用を決めて欲しいと言っているようなものである。
- それに留まらない事例が見られる。自分では当然のごとくどう法活用させるべきか分かっているにもかかわらず 最後までこれを明らかにせず 相手に迫って 早く察したまえとなじっていることもある。大抵のばあい そのときには 自分は いい子でいたいと言っている。
3−34 以上(§3文の要素:語)をめぐってさらに明らかにすべき課題は 次のようである。
- 体言の格活用の生成にかんする整序。
- 主題提示層および論述収斂層の二層において。
- 用言の法活用の生成 従って その法活用の組織の生成にかんする整序。
- 用言は 動態用言・状態用言そして補充用言の三種である。
(つづく)