《甘え》概念の普遍性
もくじ→2005-03-13 - caguirofie050313
日本人はもともと全知全能の神の信じたわけではなく またそれと反対に過去に人間の自律を謳歌したこともないが 明治以後西洋に倣い 殊に先の大戦に敗北して以来は 西洋の理想を我が理想とすることを誰もあやしまなくなった。
そしてそれと同時に もともとは大人でも子供でも甘えると思われていたのに 甘えは幼児的であるとしてさげすむ風潮が一般に生じ それとともに西洋におけると同じく精神を病む者の数が増えて今日に至っているのである。
《甘え》理論は私が米国体験のカルチャ・ショックによって日本人の心に刻まれた《甘え》の感性に注目したことに始まったことは前著《〈甘え〉の構造》の冒頭にのべたごとくである。しかし《甘え》概念は幼児性の重要性を再認識させる。
その意味で《甘え》概念は日本人の精神分析に役立つばかりでなく 西洋人の精神分析にも役立つ。かくして近代西洋人の自我意識 殊に敢えて幼児性を否定して自立を主張する場合にそこに屈折した甘えを認めることが可能となるのである。(p.218-219)
- 作者: 土居健郎
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- 幼児性は すべて否定すべきものであるとは限らない。
- 近代市民の思想・科学を生んだ欧米の人びとのあいだにおける《自我意識》 これについても 《甘え》の概念をとおして 分析することができる。
(つづく→2005-04-10 - caguirofie050410)