華のにほひの または 胎動のころ
目次
1 華のにほひの
2 花びらのように
3 優しき律動(裸の電車が・・・)
4 親鸞の朝
5 親鸞の午後
6 馬のひとみを流れるしずくが・・・
7 塔の歌
〔難解でなにを言っているのか分からない現代詩を読んでいたとき 試みに作ったものです。〕
- 詩の創作・翻訳 - caguirofie041214
1 華のにほひの
最もわたくしなるもの
が語るもの
ふたたび
レアリテをくどくもの
書物を生きるのも
わたくしが
書信をささやくのも
おおいなる
物語りよいかれ
おおやけなる
組み込まれる
和歌よ しかも匂え
歪みを彩る
最もわたくしなる
華のにほひの
2 花びらのように
よろしい
きみの言葉を信用しよう
その個性を注目したわけではない
きみという身元のわからないひと
少し前から ずっと前からそこにいた
いま見つけたのだ
言葉たちが
広大の内なる海を語っているからではなく
かすかなさざ波に託して
かのじょたちが
外なる亜大陸に信書を寄せているから
和親でなくとも
何の布告を発していなくとも
その海をきみが受け入れたとき
新しい世紀が始まったのだ
きみについて語ろう
きみの海が閉じており
いまだ芽吹かずとも
その無秩序の水源が
遠い岸を 幻影のうちに取り巻いている
きみについて語ろう
*
きみは泳ぐことをやめたようだ
いま
ひとつの大きな毬となって
浸りきっていた横町の構造に
花びらのように接しているのだ
きみのなかの
沈黙も喧噪も
きみの言葉が
たとえ海の豊かさを奏でなくとも
原初の日常のさなかの
語らなくてもよいもの
嵐のような貧しさだけを
発見の種族を語っていさえすれば
ぼくはきみの位置について語ろう
きみの魅惑的な貧窮について語ろう
3 優しき律動(裸の電車が・・・)
ひと言も理解できない
はずなのに
鍵盤がピアニストをたたき出すように
陰影が点描画を奏でている
のではないだろうか
明日も同じだろうか
ひと山の風が吹いて
旋律が揺れる
小さな波にそっと触れる
慰めは遠心力に吹き飛ばされる
絶対の音符がみえるようだ
五本の軌道に乗って
裸の電車が進み入る
蝶のように嘘のように
4 親鸞の朝
かれ自身
求めていた
無門の門を
さまよえる湖が
漿液を浸して
楼蘭の祈りを
朝露に映す
陽が至点に向かう
回鶻(ウィグル)のかなた
はるかな灼熱のみちを
海市が逃げる
帚木が枯れる
おお シャカムニ
セソンが枯れる
5 親鸞の午後
ちちがよこす
まなざしをひるがえして
乱反射が収斂する
ははが明日――昨日?――へ移動して
分光の雲が湧く
白く灼けた
気流がのぼった
《ともよ
《空を仰ぐ〈わたし〉を仰げ
水は言葉
土は言葉
風は言葉
世紀末の冬眠に
あたらしい歳の恍惚が吹いて
まなざしが交流して
商うこころが利潤を獲得
〈わたし〉が〈わたし〉を生んだ
*
地が動いていた
赤い土が蠢いていた
ちちが立ち
ははが守り
閉じられた地の底から
湧いて出た ぼくたち
〈わたし〉がぼくを呼ぶ
禿頭の〈わたし〉が誘う
おお カルヴィニスム
ぼくの
四畳半の文明のなかへ
よろいを着た〈明日〉が飛び込んだ
神を殺して 神を説く
詩
水は櫂
土は車輪
風は翼
つるっぱげの関門のあたりに
世紀末の神々がふすまを叩いて
おおみそかの恍惚を踊る
ぼくを
故もなく押し出した
故もなく
ぼくは押し出された
6 馬のひとみを流れるしずくが・・・
夢ならば醒める
雨ならば落ちる
雲ならば流れる
無常がコマーシャル・フィルムならば
木魚の音に混じって
新たなる夢に落ちよ
落ちて流れよ
傷まざる河を
読経の雨が白み始め
つばめたちが降りてゆく
石段をはずさず
照源寺の墓地を駆け抜ける
馬のひとみを流れるしずくが
病葉を集めて
注ぎ込む大河を
7 塔の歌
塔を去って出会った街に
親鸞の傘を忘れ
雨に打たれ 死す
銀杏並木の
街よ 驕るなかれ
塔を漕ぐ種族よ
贖罪と再生のときだ
ぎんなんの雨をささげて
祭儀だ 夢をすすめて
ばす通りをよぎり
ちかてつを航くのだ
らせんを進む染色体列
踊れ 連環よ