――シンライカンケイ論――
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第四部 風と象と羊とねじまき鳥と ――村上春樹をめぐって――
(2005-05-04 - caguirofie050504よりのつづきです。)
第六十二章 井戸の上に吹く風・・・。
Ⅷ ねじまき鳥クロニクル
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1997/09/30
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(75) この作品には 第三部以降が予告されている。その含みをもちつつ これまでの風の物語を ひとまず締めくくることができるものなら そうしよう。
(76) 妻のクミコが 主人公のもとから―― 一たんとしてでも―― 去っていく話である。前作《国境の南、太陽の西 (講談社文庫)》での有紀子とそして頑固な語り手二人の夫婦物語の続編ということになる。(あるいは 姉妹作品という見方もしうる。)遠くは 《ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)》でのユミヨシさんと語り手との共同生活からの続編である。
小林緑との関係にまでさかのぼるかどうか?
資格やそれにまつわる意味での不安の問題が 単に世間向けの説明であるその反面で 主人公の頑固さにかかわって世間を超えるある種の志(仏教の《出世間》)の問題であるとすれば さらに遠くは 鼠物語に源を発している。その水源は むしろそれに対する批判的なかかわりだとすれば 生活日常に視点と場とを置くということであろう。
もはや羊男が顔を出さないとすれば つまり出す必要がなく日常経験の上で 人間関係論を展開しているとすれば それは風にかかわる出発点に ある種の自信をもって 立ったことを意味する。ただし小説制作上のきっかけは 別個になお頑固さを維持して 《井戸》ないし無意識が 取り上げられている。
このような舞台の上に 一連の小説を通じて一つの系譜となる主人公の――あくまでかれ個人の具体的な――経験現実が 物語の世界いっぱいに 繰り広げられている。