あはれ
あわれ つまり あはれ これは あぁ(あは。 Ah ! Oh ! )と声が思わず出るようなことがらについて何らかの気持ちや思いを表わそうとする言葉です。
あらゆるものごとについて もともと 言います。
あは‐れ とレが付くのは
わ(我) → わ‐れ
そ(其) → そ‐れ
ひ(日) → ひ‐る
よ(夜) → よ‐る
の(野) → の‐ら(野良‐猫)
な(土地)→ な‐ら(くにの意。奈良)
のごとくラ行の音(ら・る・れ)が 自然生成のすがたや親愛の気持ちをふくんで言い習わす用法です。(自然生成の相は 動詞をつくるときにも用いられます。ま・め(目)→も‐る(守る)・み‐る(見る)・め‐し(見し=召し・飯)) / パニック→ パニクる。)
あは ないし あはれ は ため息をつく場合と おお( Oh ! )というようにすばらしさをたたえる場合とのふたつに大きく分かれます。(言葉の用法として 分かれました)。
ものごとを見て賛嘆するばあいには あはれ → あっぱれ(天晴れ)としてかたちが決まりました。やはり→やっぱり というように促音便のような音便が出ます。
嘆きにつうじるため息をつく《あはれ》は あわれ(哀れ・憐れ)となりました。かは(川・皮)→かわ。な‐ふ(=綯ふ)>な‐は(綯は)→なわ(縄)。
★ 「あわれ」とは?
☆ そこからさらに動詞化した《あわれ‐む》という言葉から捉えるのもよいかと思います。
この ‐む はおそらく認定の姿を示すものと思われます。つまり あわれであると認めるという意味です。め(目)・見るにかかわっているかも知れません。
かなし / かなし‐む(悲しむ・哀しむ) という言葉があります。
これは かぬ・かねるという動詞からつくられたと言います。ちょっとお答えしかねますと言うときの かね です。《するのがむつかしい。しようとしてもできない》という意味の語です。
つまり
ゆく(行く) → ゆか‐し(床しい。そちらへ〔気持ち・心が〕行くかのようだ)
やむ(病む) → やま‐し(疚しい。〔心が〕病むかのようだ)
かぬ(漢字無し)→ かな‐し(するのがむつかしい・できないようだと心に感じる)
《かなし》が 《しようとしても出来ないと感じる》というのは おそらく《その人や状態やものごとを前にしてあわれを感じるけれども それでも 何にもしてやれないという感じ》を表わすものと見られます。
そのときの気持ちが あわれ だと考えられます。声をかけるにもためらわれ かけてもただの気休めを言うに過ぎなくなるといった状態・情況を言うものと思われます。
《あわれむ》というのは それでも そのさまを見止めるだけではなく とにかく何とかしようとしているその具体的な行動をも表わし得ると言えましょうか どうでしょうか? ことばはその意味を変えたり膨らませたりしますから。