N の話(5)
同定相から否定相への N の転移
- na な(禁止法=否定命令)
- na-si 無し
- nu ぬ(否定法)
- na 名
- na-ri なり(断定法)
のように同定相をになう N がその対極の否定相にそのまま転移する。いかに?
つぎのように説明することにしている。
《留守》という語の意味変化
はじめは Aさんが家を空けるので その代わりに家にいるBさん すなわち《留守番》のことを言った。
つまりはじめは 《Bさんがいる》ことを示した。
ところが ことばの用法は 習慣として成り立ち その習慣が理屈に合わない用法をかたちづくったときにも それを良しとするくせがある。
しだいに《留守》といえば そこにいるBさんのことではなく そこにいないAさんの状態を言うようになった。
言いかえると Bの存在を言っていたのが Aの不在を言うようになった。
かくして 《なり(也り)》と存在などを断定していた同定相の N は 《なり》ではない何かを意味するようになる。かくて そのほかの何かは 存在しないものなのだ。
ほかの何かに N を用いれば それは 同定ではなく 否定となる。というよりも 非在として じつは 同定しているのであろうと考えられるのではあるまいか。
英語などでのご愛嬌
同定相
- name 名
- number 数
否定相
- no ノー
- not (否定詞)