Le reniement de Saint-Pierre
聖ペテロの否認
Qu'est-ce que Dieu fait donc de ce flot d'anathèmes
Qui monte tous les jours vers ses chers Séraphins ?
Comme un tyran gorgé de viande et de vins,
Il s'endort au doux bruit de nos affreux blasphèmes.
いったい神は、親愛な熾天使たちへと向かって上って来る
この呪詛の波をどうしようというのか?
肉と酒に満たされた暴君のように、
神は私たちのおぞましい非難を甘い声と聞き、眠りに就く。
神には天使たちの受けた抗議の電話が届いていないのか。
セラフィームたちは 今や来る日も来る日も汗だくで応対しているではないか。
まさかこのわれわれの咎めの電話が鳴っても 子守唄にちょうどよいなどということはあるまいに。
ひょっとして いやまさか 神はたらふく食って飲んでご満悦だというわけはあるまいに。
Les sanglots des martyrs et des suppliciés
Sont une symphonie enivrante sans doute,
Puisque, malgré le sang que leur volupté coûte,
Les cieux ne s'en sont point encore rassasiés !
殉教者と受刑者たちの呻き声は
おそらく心を酔わせる交響曲なのだろう。
なぜなら、彼らの欲望の代償として血が流れたにもかかわらず、
天はいまだにすこしも満ち足りてはいないのだから!
あのイエスにしたがい人びとは
次から次へと死地に追いやられるわ刑罰を受けるわ。
この人たちのすすり泣く声も 父なる神には持って来いの調べなのか。
それでも一向に動く気配は見当たらぬ。天使たちもよく見ると澄ましたものだ。
たしかに人びとは神を愛していた。そりゃあ勝手に愛したのさ。
Ah ! Jésus, souviens-toi du jardin des Olives !
Dans ta simplicité tu priais à genoux
Celui qui dans son ciel riait au bruit des clous
Que d'ignobles bourreaux plantaient dans tes chairs vives,
―ああ! イエスよ、オリーブの庭を思い起こせ!
お前は素朴に膝をついて祈っていた、
お前の生き生きとした肉体に卑しい処刑人が
釘を打ち込む音が響く中、自らの天の中で笑う者のために。
それにしてもイエスよ。あんたはあのオリヴの園で
神なる父に懇願していたぢゃないか。
そのあとあんたにははりつけの釘が待っていた。
こんこんと打たれる釘の音もむろん父なる神には心地よい音色であったとは。
Lorsque tu vis cracher sur ta divinité
La crapule du corps de garde et des cuisines,
Et lorsque tu sentis s'enfoncer les épines
Dans ton crâne où vivait l'immense Humanité ;
卑しい衛兵と料理人たちが
お前の神聖の上に唾を吐きかけるのを見た時のことを。
そして巨大な人類が生きていたその頭蓋骨に
茨が食い込むのを感じた時のことを。
あぁ きみはローマ兵らにつばきを吐きかけられていた。
吐きかけられるにまかせていたきみは ばかか。
あたまにかぶせられたいばらのかんむりも
ちっとはとげが刺さったかい? 痛かったかい?
神の子ったって 人の子だろうよ。
Quand de ton corps brisé la pesanteur horrible
Allongeait tes deux bras distendus, que ton sang
Et ta sueur coulaient de ton front pâlissant,
Quand tu fus devant tous posé comme une cible,
打ち砕かれた肉体の恐ろしい重みによって
お前の伸びきった両腕がさらに長くなり、地と
汗が青ざめた額から流されていたとき、
お前が皆の前に、的のように置かれていたとき、
やがて腕が血を流してだらりと垂れ下がって来た。
くしゃんとからだが縮こまった。
見ろよ まだ生きていらぁ。汗吹き出させて生きていらぁ。
だったらみながさげすみの心を向けておまえを見ているのが分かるだろ?
Rêvais-tu de ces jours si brillants et si beaux
Où tu vins pour remplir l'éternelle promesse,
Où tu foulais, monté sur une douce ânesse,
Des chemins tout jonchés de fleurs et de rameaux,
お前は夢見ていたのか、輝かしく美しい日々を、
永遠の約束を果たすためにお前がやって来て、
大人しい雌ロバにまたがり、花と小枝を散りばめられた
幾つもの道を踏みしめた日々を、
おまえはあの棕櫚の主の日にろばに跨って入城して来た。
その歓迎を受けた日のことがかえってうらやましいか。
国中の棗椰子の枝が道端に並び振られていた。
あの華々しきついこのあいだの日がうらめしいか。
Où, le coeur tout gonflé d'espoir et de vaillance,
Tu fouettais tous ces vils marchands à tour de bras,
Où tu fus maître enfin ? Le remords n'a-t-il pas
Pénétré dans ton flanc plus avant que la lance ?
心をすっかり希望と勇気に膨らませて、
あの卑しい商人たちを力いっぱい残らず鞭打った日々を、
そして、ついに主となった日々を? 後悔は、
槍よりも深く、お前の脇腹に食い込まなかったのか?
あるいはその前には喜び勇んで おまえは神殿で
物売りたちを咎めていた。鞭まで振り上げて。
ようやく独裁者になったと思ったか。そのことも
悔やみの種か。それがいま磔で槍が突いた脇腹の痛みよ。
― Certes, je sortirai, quant à moi, satisfait
D'un monde où l'action n'est pas la soeur du rêve ;
Puissé-je user du glaive et périr par le glaive !
Saint Pierre a renié Jésus... il a bien fait.
―確かに、私はといえば、心満たされて、
行動が夢の姉妹ではない世界から出て行こう。
剣を用い、そして剣によって滅びんことを!
聖ペテロはイエスを否認した... 彼はよくやった!
そうだろう? 夢のやぶれたキリストなんておいらはおさらばさ。
あんたが逝ってしまうのならおいらはつるぎを振りかざして人をころし
あんたから地獄行きの宣告をいただくほうがましさ。
あのペテロもあんたをあのときは裏切ったではないか。三回も。