caguirofie

哲学いろいろ

Vampirisme

Vampirisme――胎動のころ――


彼の襞
彼のひだに触れる者は皆枯れる


彼は人の血を吸って襞を肥やす
彼の表皮には血腥いひだが二重三重に重なる
やがてそれは加速度をつけ自ら増殖する


やわらかいが幾重にも重なったひだ
その深層の襞はやがてもはや外から中へ
分け入ることが困難となる


ひだを選り分け正して中へ入ろうとしても
いつも漂流してしまう


外からの侵入が困難なひだが
どうして中からの放散がたやすかろう
彼のこのひだ




彷徨は止んだ
今はただ真直ぐ
冥界へ急ぐのみ
あんこうのように闇(テネーブル)の道
をたどり冥界の王を訪ねるのみ
願わくは王(プリュト)よ
我れにあんこう(ボードロワ)の
生命を与えよ


二万海里を昇り光を放つあのμ光線に
海底のあんこうの口から漏れる
この一息が
オリオンを刺したあのスコルピオンの
毒をもって
岸辺を這い
森を過ぎてたどり着き
その放射を間歇的に破壊し去り
繋がれたプロメテウスの苦悩を
もたらすのみ


リュートの神のおん前に
μ光線は裁かれよう