海のそよかぜ( Mallarmé)
肉体は悲しい
すべての書物を読み終えた
逃避
彼岸へと
鳥どもも
酔ったように翔ける
未知の
泡と空の間を
ひなびた公園など
海の
中へ
濡れてゆく心を
引きとどめようともしない
夜
清浄の白い紙を
照らす
荒んだ明晰も
消え
幼児に乳を与える若い
女も
さあ出発
帆柱を揺らす汽船よ
異国自然へと
ひとつの
倦怠は
残酷な希望に打ち震えて
まだ
ハンカチは最後の告別だと
信じている
おそらく
帆柱は暴風雨を
呼んで
風に吹かれて
帆もなく柱もなく
孤島すらない
難破船の上に
垂れ懸かるものと
心よ
水夫の歌を聞け