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哲学いろいろ

税制を考える / 基礎年金を全額税負担に

――京都大学教授橘木俊詔氏(経済教室)2005/10/20, 日本経済新聞 

消費税率15%で / 日本経済の活性化にも
 公的年金は全国民を対象に定額支給する方式に改め、その財源として保険料負担を廃止する一方、税率一五%の累進消費税(生活必需品は低税率)の導入を検討すべきである。国民の老後生活への不安を除去できるうえ、労働供給や貯蓄率が向上し、日本経済の活性化にもつながる。

すべての国民の老後不安を除去
(1)公的年金はすべての国民を対象にして、一階部分の基礎年金(あるいは最低保障年金)を夫婦二人で月額十七万円(単身者は九万円)の定額支給とする。

  • なお、高額所得者については、ミーンズ・テスト(所得・資産の調査)によって給付額を減額してもよい。

(2)現在の二階建て部分は、積み立て方式に改めるとともに民営化する。
(3)平均税率一五%の累進消費税を導入する一方、基礎年金給付の財源を全額税負担とし、消費税収をその財源に充てる。

  • 平均一五%という高率の累進消費税の導入は、基礎年金給付額の三分の一強が税負担となっている現制度(税負担は現在、従来の三分の一から二分の一に向けて引き上げの途中)を、全額税負担にするための策である。
  • 現在の国民年金には四割近くの未納があるほか、厚生年金は事業所ベースで約二割が未加入となっており、日本の公的年金制度は徴収側からみると既に崩壊している。ここは徴収能力の高い消費税に期待して、公的年金制度を再建する必要がある。etc.
  • さらに、筆者のいう累進消費税は、食料品、教育関連、医療関連といった生活必需品については非課税を原則とし、財のぜいたく度によって税率を変えるので、消費税のもつ逆進性の欠陥は縮小されることを付記しておこう。家計への負担感を抑制するための方策が累進消費税なのである。

(4)この累進消費税は当初は年金目的税でかまわないが、一般税収化が望ましい。
(5)究極的には、付加価値に課税する消費税よりも、支出に課税する支出税のほうが税源として望ましい。

  • 支出税は、家計の支出額(所得マイナス貯蓄)を課税ベースとするもので、消費税よりも資源配分上のゆがみが少なく優れている。徴税技術的な問題から現在採用している国はないが、将来的には日本でも導入が検討される可能性もあるので、今後の検討課題として提言している。

(6)現在ある厚生年金の積立金約百四十兆円は、その全額を保険加入者がこれまでに支払った保険料に応じて還元する。

  • (拙著『消費税15%による年金改革』(東洋経済新報社)を参照されたい。この本は二十代の若者との合同作品なので、若者からの主張でもあることを付言しておこう。