caguirofie

哲学いろいろ

・・・

霜の降りた月面の中から
かのじょの薄氷りが立体派を成して
天体への飛翔に傷ついた雲間から
凍土が油彩画を破って
圧し掛かる砂嵐の下から
葉脈を伸ばして
黄道が公転して


鋭角の傾きが
夕凪を引きずる主体の回転を
海流を揺さぶって
少女の偏西風が
春の雨を吸って
プリズムの陽光を
楕円軌道に乗せて


草深い惑星のうなりを
花明かりの地殻の中から
膨張する陽炎の舌を
蛇行の中に抱き集め
潮騒のぼくを
アカシアの梢に飛ばす


波が憂えて
水しぶきが憶い出して
青い雲が震えて
少女が流れる
憂える波
憶い出す水しぶき
震える雲
かのじょの少女が流れる


偏西風に潮騒がさざめいていた

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#12

――ボエティウスの時代・第二部――
もくじ→2006-05-04 - caguirofie060504

§2 バルカン放浪 *――または 孤独―― (12)

まず最初には その前に 叔父ウィディメル隊のほうのその後の消息について触れておくのがよいかと思う。
テオドリックの叔父にあたるもう一人のゴート王ウィディメルは 分割された自らの種族共同体を率いて イタリアに向かったのであるが このローマ帝国の西側領土の中心地であるイタリアでは ゴート種族のパンノニアからの移動の年(四七二年のことだが)にコンスタンティノポリスの皇帝レオ〔??世〕の送った西の皇帝アンテミウスが やはり蛮族・すなわち特にゲルマーニアからのいくらかの種族の者たちによる 内部からの攻勢を防ぎ切れず ついに 暗殺されるという結果をもって まず しりぞけられたのであった。

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