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哲学いろいろ

1.R.ジラール著:世の初めから隠されていること (叢書・ウニベルシタス)

1.犠牲の問題

まずは 技術的な――揚げ足取りになるような――批判から入ることを ゆるされたい。
それは ジラール自身のことばとして 次のふたつの文章を くらべて見ることです。

《a》殺さないために自分のいのちを投げ出すこと(donner sa propre vie) そうすることによって殺しと死との悪循環から抜け出すために自分のいのちを投げ出すことを ためらってはいけません。
(2・2・G)
《b》あらゆる供犠のやり方(toute demarche sacrificielle)は そのうえ特に(=中でもとりわけ)自分自身にはねかえってくる(retournee contre soi-meme)ようなものは 福音書のテクストのほんとうの精神に一致しないと結論せざるをえません。
(2・3・D)

Rene GIRARD:des choses cachees depuis la fondation du monde,Grasset
ISBN:224661841X

《a》と《b》とは 矛盾している。一見しての矛盾であるが その矛盾を著者が解決するその仕方が 矛盾したものになっているように思われます。

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