文体――第四十一章 眼(ま)ドルマン(下)
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(2005-02-21 - caguirofie050221よりのつづきです。)
第四十一章 眼(ま)ドルマン(下)
ε
Le silence s'ouvre
Dans une petite ville
Que l'argentin couvre.
私たちの住むK市は 古くからの城下町で 宿場町でもあり 渡し場のあった小さな港町でもありました。広い海の波を銀色に輝かせた朝日は やがて 街の軒並みを照らし出します。前夜の雪は止んで 町一面が銀世界です。新聞やら牛乳やら朝一番が 処どころに 動き始めました。
台所で朝の物音が聞かれました。釜に火をくべる母と その傍らで 早起きの祖母も 何かしら手伝っています。夜が明けて一番に聞く水の音は爽やかなものです。父は 朝刊を取りに そろそろ起きようかと欠伸をしたところです。私の眠る部屋にも 雨戸の隙間から漏れた 透きとおるような光線が射しかけて来ました。私は前の夜の竜神の夢も忘れてしまったのか また一日が始まるなと身体で感じていました。